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平均貯蓄2059万円に届かないと感じた人へ。この数字は単身世帯を数えず、借入も引いていない

5月、総務省統計局が公表しました。要約の1行目には、こう書かれています。

二人以上の世帯における平均の1世帯当たり貯蓄現在高※は、で、前年に比べ、3.8%の増加となり、連続の増加となるとともに、比較可能な以降で最多となっている。

このは、公表から数か月にわたって繰り返し記事になりました。事業構想オンラインは5月に伝え、Finaseeは6月に見出しを立てました。日本経済新聞は7月、同じ数字をいう見出しで扱っています。LIMOは6月と8月にYahoo!ニュースへ配信した記事で、して紹介しました。

聞いて、自分の預金残高と比べた人もいるはずです。ただ、比べる前に確かめておくことがあります。この数字は、どの世帯を数え、何を入れ、何を引かずに出した値なのか。この記事では、統計局の要約・概況と、家計調査年報に収められた調査の概要から、それを書き出します。

数えているのは「二人以上の世帯」だけ

まず対象です。家計調査そのものは全国の世帯を対象にしていますが、貯蓄と負債を聞く二人以上の世帯にしか配られていません。家計調査年報の概要は、調査票の種類を次のように説明しています。

、、及び4種類の調査票

つまり一人暮らしの世帯は、の計算に1世帯も入っていません。年報のページ冒頭でも、貯蓄・負債編はたものと書かれています。報道の多くは見出しか本文に入れていましたが、Finaseeの見出しは、日本経済新聞の見出しは、見出しだけを読むと対象の限定は見えません。

次に、その二人以上の世帯の中身です。概況のによると、平均の世帯数分布、勤労者世帯5,620、無職世帯3,450、個人営業などの世帯930でした。およその1が無職世帯です。また概況の第Ⅲ章は、世帯主が65歳以上の世帯が二人以上の世帯の42.9%を占めると書いています。年間収入五分位の表の平均欄では、世帯主の平均年齢は60.1歳です。

はではなく、世帯主の4割強が65歳以上という集団の平均です。統計局は同じ資料の中で、世帯の種類ごとの値も出しています。

集団 二人以上の世帯に占める割合 平均値 貯蓄保有世帯の中央値
二人以上の世帯全体 100%
うち勤労者世帯 56.2%
うち世帯主が65歳以上の世帯 42.9%

勤労者世帯と世帯主65歳以上の世帯は一部が重なるため、割合を足しても100%にはなりません。同じでも、どの集団を取り出すかで平均値は以上動きます。自分の世帯と比べるなら、少なくともどの行と比べるのかを選ぶ必要があります。

2059万円に入るもの、入らないもの

中身は、年報の概要定義があります。要点を抜き出すと、次のとおりです。

生命保険及び積立型損害保険の掛金並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいう。なお、貯蓄は世帯全体の貯蓄であり、また、個人営業世帯などの貯蓄には家計用のほか事業用も含める。

この定義から、数え方の違う項目が混ざっていることが分かります。

貯蓄の種類 金額 構成比 どの時点の、何の金額か
通貨性預貯金 34.5% 普通預金・当座預金などの残高
定期性預貯金 24.8% 定期預金・定額貯金・定期積金などの残高
有価証券 21.4% 株式・投資信託は調査時点の時価。債券・金銭信託は額面
生命保険など 17.9% 積立型の保険の、加入してからの掛金の払込総額
金融機関外 1.4% 社内預金、勤め先の共済組合への預貯金など

は、いま解約したら戻ってくるお金でも、満期に受け取るお金でもなく、これまでに払い込んだ掛金の合計です。株式と投資信託は時価なので、株価が上がればそれだけ増えます。概況によると有価証券は前年から、16.7%増えていて、貯蓄全体の増加の大部分にあたります。

入らないものもあります。用語の説明は、金融機関外の貯蓄について書いています。年金型貯蓄の説明ではしています。住宅や土地は、そもそも貯蓄の定義に入っていません。一方で、自営業などの世帯では事業用の預金も入ります。

この定義を踏まえると、日本経済新聞の見出しにあるいう語と、家計調査の同じものではありません。家計調査の、保険を払込総額で、債券を額面で数え、手元の現金を数えない、この調査独自の集計範囲です。見出しの語がどの意味で使われたのかは、本文の無料部分からは確認できませんでした。

借入は引いていない

は、借入を差し引いた後の金額ではありません。統計局は負債を別に集計していて、同じの二人以上の世帯の負債現在高でした。単純に差し引くとになります。

この差し引きがどれだけ効くかは、世帯主の年齢で大きく変わります。要約の図5表にすると、次のようになります。

世帯主の年齢 貯蓄現在高 負債現在高 差し引き 負債保有世帯の割合
平均 37.5%
40歳未満 - 64.3%
40~49歳 - 67.0%
50~59歳 53.7%
60~69歳 26.5%
70歳以上 10.4%

概況はこれを「50歳未満の各年齢階級では、負債現在高が貯蓄現在高を上回っており、負債超過」とまとめています。負債の約9割住宅・土地のための負債です。40歳未満の世帯は、貯蓄の平均がである一方、住宅ローンを中心に平均の負債を持っています。

ここで注意がいるのは、この表の住宅そのものの価値を足していないことです。ローンで買った家は負債として引かれますが、家の側は数えられていません。純貯蓄額がマイナスでも、それはこの統計の範囲で見た貯蓄と負債の差であって、その世帯の財産全体がマイナスという意味ではありません。

平均値と中央値は、ゼロの世帯の扱いも違う

がであることは、多くの報道が中央値と並べて伝えていました。ただ、中央値には2つの値があり、定義が異なります。

指標 値 貯蓄ゼロの世帯
平均値 含める
貯蓄保有世帯の中央値 除く
貯蓄現在高が世帯を含めた中央値 含める

要約の注は、平均値を、中央値を「貯蓄現在高が世帯を除いた世帯を貯蓄現在高の少ない方から順番に並べたときに、ちょうど中央に位置する世帯の貯蓄現在高」と定義しています。年報の概要にも「中央値求める際には、特に断りのない限り、金額が世帯は含めていない」とあります。つまり、平均値と、見出しでよく並べられる中央値とでは、分母に入る世帯がそろっていません。ゼロの世帯を含めてそろえた中央値はで、こちらは参考値の扱いです。

分布の偏りも資料に書かれています。平均値を下回る世帯は66.1%で、概況は表現しています。未満の世帯が10.1%ある一方、以上の世帯が15.2%あり、この上の層が平均値を押し上げています。

報道を見ると、事業構想オンラインは中央値を書き、Finaseeはさらにゼロの世帯を含めたまで紹介していました。LIMOの8月の記事はを位置づけていますが、取得できた本文の範囲では、ゼロの世帯を除いた値であるという説明は見当たりませんでした。

「2025年」の中身は2024年10月から2026年2月

時点にも特徴があります。家計調査の世帯は6か月間調査され、貯蓄と負債は、その世帯の調査開始3か月目の時点の金額を聞きます。年報の概要によると、年平均は、各月に調査していた世帯の値を月ごとに平均し、それを12か月で単純平均したものです。概要には、こう書かれています。

1月の貯蓄・負債現在高には、1月に調査を終了した世帯の10月現在の貯蓄・負債現在高が含まれ、12月の貯蓄・負債現在高には、12月に調査を開始した世帯の2月現在の貯蓄・負債現在高が含まれている。

、10月から2月までの、さまざまな時点の残高を平均した値です。株式と投資信託を時価で数えるため、この期間の株価の動きも中に入ります。年末時点の残高をだけ測った数字ではありません。

いう限定にも理由があります。統計局のによると、までは貯蓄動向調査が毎年末時点で調べていました。からは家計調査の中で調べる方式に変わったため、統計局はしています。概況の参考ページはのからまでをのグラフに載せていますが、以前は貯蓄動向調査の数字であると注記しています。

報道を並べると、事業構想オンライン・Finasee・日本経済新聞のリードは、いずれも限定を入れていました。日本経済新聞は見出しではとだけ書き、リードで補っています。

何世帯から出した数字か

最後に母数です。二人以上の世帯の調査世帯数は、年報の概要の表1で全国8,076世帯とされています。ただし貯蓄・負債編は、貯蓄・負債が分からない世帯を除いて集計していて、平均の集計世帯数は5,455世帯でした。全国の結果の精度を確保するのに必要な標本サイズとして、概要はいう目安を示しています。

概要の表2によると、平均の標準誤差率は、全国の貯蓄現在高で1.4%、負債現在高で2.2%です。の1.4%は約にあたります。地方別の貯蓄現在高では、沖縄が12.3%、四国が6.7%と大きくなります。地方別の数字は、全国の数字よりも幅を持たせて読む必要があります。

報道との差分

原資料の条件と、報道4媒体の書き方を並べます。

原資料の条件 事業構想 Finasee 日経 LIMO
二人以上の世帯に限る 見出しにあり 本文で確認できず リードにあり 見出しにあり
統計上の語は 貯蓄現在高 平均貯蓄額 金融資産 平均貯蓄
以降の比較 あり あり リードにあり 確認できず
中央値はゼロの世帯を除く 明記 明記 無料部分に記載なし 記載なし
負債は別集計 数字あり 確認できず 無料部分に記載なし 数字なし

、取得できた範囲の本文に該当の記述が見当たらなかったという意味です。日本経済新聞の記事は会員限定で、確認できたのは見出しとリードだけです。

なぜこういう差が出るか

資料の側から見ると、要約の1ページ目には平均値・中央値・負債・勤労者世帯の値がそろって載っています。条件が落ちるのは、そこから数字を1つだけ取り出して見出しにするときです。

1つめは、統計の名称と一般語のずれです。統計上の語はですが、これを日常語の置き換えると、保険を払込総額で数えることや、現金を数えないことは語の中から消えます。2つめは、対象の限定がいう長い語であることです。見出しの字数の中では、数字と残し、世帯の限定を省く選択がありえます。3つめは、公表の間隔です。貯蓄・負債編の年平均は年で、5月の公表の後、数か月にわたって同じが別の記事の入口として使われ続けました。後から書かれる記事ほど、原資料ではなく先行記事の要約を起点にしている可能性がありますが、どの記事が何を参照したかは資料からは確認できません。

いずれも、どれかの記事が数字を取り違えているという話ではありません。は、原資料の定義どおりに書けば「二人以上の世帯の、借入を引かず、保険を払込総額で数えた貯蓄の、ゼロの世帯を含む平均値」です。報道の見出しは、その長い条件のどこかを省いた形になっています。

分からなかったこと

単身世帯を含めた全世帯の貯蓄の平均は、家計調査からは出せません。貯蓄等調査票が二人以上の世帯にしか配られていないためです。単身世帯を含めた貯蓄を別の統計で確かめる作業は、この記事ではしていません。

が、解約返戻金などの実際の価値で数えるといくらになるかも分かりません。資料は払込総額しか示していません。

日本経済新聞の記事がいう語を家計調査のどの項目の意味で使ったか、また中央値や負債に触れたかどうかは、会員限定部分を読めていないため確認できませんでした。Finaseeの記事がや負債に触れていたかも、取得できた2ページ目の範囲では確認できていません。

出典

一次情報

報道

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