日本経済新聞は「「読書好き」小中学生69%」という見出しを立てました。
この数字の出どころは、公益財団法人博報堂教育財団こども研究所が2026年10月8日に発表した「子どもの読書」調査です。
原資料を開くと、69.3%は6段階の選択肢のうち上の3つを足した値でした。
3つのうち最も多かったのは「まあ好き」です。
また、この調査でいう「本」には、まんがやクイズ・パズルの本、電子書籍やオーディオブックも入っています。
この記事では、見出しの数字が何を数えているのかを原資料から順に確かめます。
何が報じられたか
日本経済新聞の見出しは「「読書好き」小中学生69%」で始まり、続けて「時間は短め」「娯楽多様化」という2つの要素を並べています。
見出しは、好きな子は多いが読む時間は短く、その背景に娯楽の多様化がある、という読み方を促す並びです。
記事の掲載日と本文の全文は確認できませんでした(後述)。
元になった発表は、博報堂教育財団が2026年10月8日付で出したニュースリリースです。
共同通信PRワイヤーで配信され、原資料のPDF(8ページ)も公開されています。
リリース本体の見出しは、本を読むことが好きな小中学生が69.3%、1週間の読書時間は「全く読まない」が17.4%、「1時間未満」が55.2%というものです。
日経の見出しにある3つの要素は、どれもこのリリースの中に対応する箇所があります。
原典に当たる
調査の概要は原資料の8ページに書かれています。
方法はインターネット調査で、実施日は2026年8月9日(日)の1日です。
対象は全国の小学4年生から中学3年生で、有効回答数は1,200人です。
学年と性別の割り付けは各学年の男子100人・女子100人ずつで、小学生600人・中学生600人の同数になっています。
調査パネルは株式会社マクロミル、実施・集計はQO株式会社です。
回答にあたっては、事前に保護者の承諾を取ったと書かれています。
回答した子どもの保護者は、父親681人・母親519人で、年代は40代が738人と最も多くなっています。
69.3%の元になった設問は「あなたは、本を読むことがどれくらい好きですか」です。
選択肢は6段階で、全体1,200人の結果は次のとおりです。
大好き12.8%、好き26.8%、まあ好き29.8%、あまり好きではない19.2%、好きではない7.0%、まったく好きではない4.5%。
上の3つを足した「好き」計が69.3%です。
原資料は内訳として、「大好き」12.8%、「好き+まあ好き」計56.6%、「好きではない」計30.7%も示しています。
なお、この6段階には「どちらでもない」という中間の選択肢がありません。
「本」の範囲は原資料1ページに明記されています。
絵本、物語・小説、伝記・ノンフィクション・エッセイ、知識・雑学の本、やり方・作り方の本、謎解き・クイズ・パズル、普通のまんが(ストーリーまんが)、学習まんが、図鑑・辞典、写真集、イラスト集です。
紙の本だけでなく、電子書籍やオーディオブックも含めるとしています。
普段読む本の種類を聞いた設問では、「物語・小説」が45.3%、「普通のまんが」が43.6%で、ほぼ同じ割合でした。
読書時間の設問は「普段(夏休みではない普通の時)の1週間で、何時間くらい本を読みますか」です。
全体の結果は、1時間以上27.4%、30分〜1時間未満23.5%、30分未満31.7%、0分(全く読まない)17.4%でした。
学校段階別に見ると、「全く読まない」は小学生12.8%、中学生22.0%です。
報道との差分
| 見出しの要素 |
原資料にある中身 |
見出しでは見えなくなったもの |
| 読書好き69% |
6段階の上位3つの合計69.3%。 いちばん多い答えは「まあ好き」の29.8% |
「大好き」は12.8%。 「大好き」と「好き」を足すと39.6% |
| (読書の対象) |
まんが、学習まんが、クイズ・パズル、電子書籍、オーディオブックを含む |
「読書」という言葉から多くの人が思い浮かべる範囲より広い定義 |
| 時間は短め |
週1時間未満と0分を合わせて72.6%。 1時間以上は27.4% |
時間は本人の自己申告。 夏休み中の8月9日に、夏休みではない普段の週を思い出して答えている |
| 娯楽多様化 |
「本を読むよりも動画やゲームのほうが楽しい」に「そう思う」計76.5%。 研究員コメントの「背景には…ありそう」 |
この設問が聞いているのは楽しさの比較で、動画やゲームに使った時間は聞いていない |
4行目は特に注意が必要です。
原資料の設問は「本を読むことについて、あなたの気持ちに近いもの」を聞く態度の質問です。
結果は、「本を読むのは楽しい」が63.9%、「本を読むよりも動画やゲームのほうが楽しい」が76.5%でした。
動画やゲームの利用時間を測った項目は、原資料8ページの範囲には見当たりません。
娯楽との時間配分という説明は、研究員コメントの中で「背景には、…多様な娯楽との時間配分がありそうです」と推測の形で書かれています。
原資料には、見出しに入らなかった数字もあります。
読書が「大好き」な子ども153人では、週1時間以上読む割合が68.0%でした。
これに対し、「好き+まあ好き」計の679人では31.7%です。
つまり69.3%の「好き」計の中にも、読む時間の長さが大きく違う層が混ざっています。
なぜそうなったか
見出しが69%という数字を取ったのは、リリース自体が最初の見出しとポイントの1番目に「好き」計の69.3%を置いているからです。
報道は発表資料の先頭に置かれた数字を引き継いでおり、その数字の作り方(6段階の上位3つを合計したもの)は見出しの字数には入りきりません。
6段階に中間の選択肢がない設計が結果にどう影響したかは、資料からは確認できません。
ここから先は推測です。
中間の選択肢がないと、迷った回答者は「まあ好き」か「あまり好きではない」のどちらかを選ぶことになります。
その振り分けが「好き」計の大きさに影響している可能性があります。
保護者についての数字も構造に注意が必要です。
保護者の読書時間が週1時間以上の家庭(331人)では、子どもの「好き」計が91.8%でした。
読書しない家庭(314人)では36.3%です。
原資料のポイント6は「保護者の読書習慣や子どもへの働きかけがあるほど高くなる」と書いています。
ただし本文の結びは「関連があるようです」で、1回だけの調査で同じ家庭を比べた結果なので、示せるのは相関までです。
また、回答者は保護者の承諾を得たネット調査パネルの子どもです。
読書に関心のある家庭が多めに含まれているかどうかは、資料からは確認できません。
ほかの調査と比べるときにも注意が要ります。
全国学校図書館協議会の第70回学校読書調査(2025年6月実施)では、中学生の不読者率が24.2%でした。
不読者は、5月の1か月間に読んだ本が0冊の生徒を指します。
今回の調査の中学生「全く読まない」22.0%と数字は近く見えますが、今回は「普段の1週間の時間」を聞いています。
期間の単位も、時間か冊数かという数え方も違うため、この2つを並べて増減を論じることはできません。
分からなかったこと
日本経済新聞の記事は有料会員向けで、本文の全文と掲載日を確認できませんでした。
そのため、本文が「まあ好き」を含む合計であることや本の定義に触れているかどうかは分かりません。
原資料には、ウェイトバック(母集団の構成に合わせた補正)をしたかどうかの記載がありません。
研究員コメントは企画のきっかけを「こども定点調査2025」で「読む」行動が減ったことと説明していますが、その定点調査の数字は今回取得していません。
今回の調査は単年の結果で、同じ設問での経年比較は原資料にありません。
学校読書調査が「本」にまんがを含めるかどうかも、取得した範囲では明記を確認できませんでした。
出典
- 公益財団法人博報堂教育財団 こども研究所「子どもの読書」調査 ニュースリリース原資料PDF(2026年10月8日)https://cdn.kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M101784/202610057287/_prw_PR1fl_gNinU15T.pdf
- 同リリース 共同通信PRワイヤー配信ページ(2026年10月8日)https://kyodonewsprwire.jp/release/202610057287
- 全国学校図書館協議会「学校読書調査」第70回(2025年6月実施)https://www.j-sla.or.jp/material/research/dokusyotyousa.html
- 国立国会図書館カレントアウェアネス・ポータル 第69回学校読書調査の結果(2024年11月12日)https://current.ndl.go.jp/car/229477
- 日本経済新聞「「読書好き」小中学生69% 時間は短め、娯楽多様化」(掲載日未確認)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD220O70S6A021C2000000/
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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