2026年9月30日、KDDIは楽天モバイル向けのローミング(他社の回線を借りて通信する仕組み)について、10月以降の提供エリアを示すマップを公開しました。
日本経済新聞はこれを「18政令市の市街地」で回線貸しを縮小すると報じています。
ただし、KDDIの公式ページは「18」という数字を出していません。
各社の数字がどの資料から来たのかを、一次情報に戻って確かめます。
何が報じられたか
KDDIは2026年9月30日、自社サイトのローミング案内ページで提供エリアのマップを更新しました。
マップでは「2026年9月」と「2026年10月以降」を切り替えて比べられます。
各社の見出しは、同じ発表でも数字の置き方がそれぞれ違います。
日本経済新聞は「18政令市の市街地」、ITmedia NEWSは「ほぼ半減エリアも」、ITmedia Mobileは「9月末から大幅減」を見出しにしました。
ケータイ Watchは「10月からのエリアマップ公開」として、マップの公開そのものを見出しにしています。
検索キーワードでは「ローミング終了」という言い方が広まっていますが、KDDIのページは「終了」とは書かず、ローミングエリアを「順次縮小していきます」と書いています。
原典に当たる
一次情報は4つあります。
1つ目は、2023年5月11日に楽天モバイルが出したプレスリリース「KDDIと楽天モバイル、新たなローミング協定の締結について」です。
この協定で、ローミングの提供期間は2023年6月から2026年9月までとされました。
あわせて、東京都23区・名古屋市・大阪市を含む都市部の一部繁華街が新たにローミングの対象に加わり、地下鉄・地下街などの一部屋内とルーラルエリア(人口の少ない地方)も引き続き対象とされました。
延長については「両社協議の上決定します」とだけ書かれています。
2つ目は、2026年8月7日のKDDI決算説明会です。
ケータイ Watchの同日付の記事によると、KDDIの松田浩路社長は「現在の契約期日である9月末で終了する方向で進めている」と話しました。
そのうえで、基地局の整備は楽天モバイル自身が行うことを前提に「一部に限定した形で、期間を定めてインフラ維持に協力する」とも述べています。
3つ目は楽天モバイル側の発表です。
2026年8月12日のプレスリリース「ローミングに関して」と9月5日のお知らせで、同社は次の方針を示しました。
楽天回線だけではカバーに時間がかかるエリアでは10月以降もローミングを続け、自社回線で十分にカバーできているエリアではローミングを縮小する、というものです。
4つ目は、9月30日に更新されたKDDIのローミング案内ページです。
ローミングは「補完的な措置として一定期間」提供するもので、提供エリアは「順次縮小していきます」と書かれています。
楽天モバイル向けローミングサービス契約約款も、同じ日付(令和8年9月30日)で掲載されています。
このページで確認できたのはマップと方針の文言だけです。
縮小の対象になった都市の数や、エリアの面積・減少率といった数字は見当たりませんでした。
報道との差分
| 数字・表現 |
出どころ |
KDDI公式ページの記載 |
| 18政令市 |
日本経済新聞の見出し(算出根拠は有料部分にあり未確認) |
都市の数の記載はない |
| 18市の合計で約4,460平方kmから約2,820平方km、約37%減 |
ケータイ Watchの石川温氏のコラム。 KDDIが公開したマップの画像を生成AIに読み込ませ、ローミング区域の色の面積を測った推計 |
面積の記載はない |
| 神戸市59%減、全国平均20%減 |
同じコラムの同じ推計 |
記載はない |
| ほぼ半減 |
ITmedia NEWS。 マップを見比べた観察で、数値は示していない |
記載はない |
| 終了 |
検索キーワード・一部の見出し |
「順次縮小」。 現行の枠組みは9月末で終わり、10月から新たな枠組みに移る |
石川氏のコラムは、全国に20ある政令指定都市のうち、大阪市と名古屋市はそもそもローミングエリアに含まれていないと書いています。
ケータイ Watchの9月30日付ニュースも、東京23区・名古屋市・大阪市ではローミングがすでに終わっていると書いています。
「20市から、すでにローミングが無い2市を除いた18市」と考えれば、日経の「18」と数が合います。
ただし、日経がこの数え方をしたかどうかは、公開部分からは確認できませんでした。
なぜそうなったか
数字が報道ごとに違う理由は、KDDIが出した一次情報が「マップ」だったことにあります。
マップは地図の上に色で区域を示すだけなので、何市が対象か、何割減ったかという数字は見る側が作ることになります。
都市の数で数えるか、色の面積で数えるか、目で見て比べるかで、見出しに載る数字が変わります。
一方で、方針の文言そのものはKDDIのページと楽天モバイルの発表でほぼ一致しています。
KDDIは「補完的な措置として一定期間」「順次縮小」と書き、楽天モバイルは「カバーに時間を要するエリアは継続、十分カバーできているエリアは縮小」と書いています。
両社の文言が一致している以上、報道の差は主に「マップをどう数字に直したか」の違いから来ていると整理できます。
「終了」という言葉が広まった理由は、次のように辿れます。
2023年の協定が期限を2026年9月と決めていたこと、そして8月7日の決算説明会でKDDI社長が「9月末で終了する方向」と話したことです。
この発言が報道の起点になりました。
資料を時系列で並べると、「現行の契約は予定通り終わるが、新たな枠組みで一部は続く」という2段の構造です。
見出しでは前半の「終了」だけが残りやすい構造になっています。
石川氏のコラムの「約37%減」は、公開されたマップから面積を割り出した数少ない定量推計です。
ただし、画像から色の範囲を読み取る方法には次の限界があります。
マップの縮尺、色の判定、行政区域の境界の扱いによって結果が変わります。
また、面積と利用者が受ける影響は同じではありません。
市街地の小さな区域が減ることと、郊外の広い区域が減ることでは、影響を受ける通信量が違います。
資料からは確認できませんが、利用者への影響は面積の減少率だけでは測れないと考えられます。
分からなかったこと
日本経済新聞が「18政令市」をどう数えたかは、有料部分にあるため確認できませんでした。
上に書いた「20市から2市を引く」という対応は、数が合うことを示しただけです。
KDDIが面積・人口カバー率・対象の市区町村数といった数字を公表しているかも、今回確認したページの範囲では見つかりませんでした。
10月以降の「新たな枠組み」がいつまで続くのか、次にどこを縮小するのかも、両社とも具体的な時期を示していません。
楽天モバイルの利用者の通信品質が10月以降に実際どう変わったかを示す計測データは、この記事を書いた時点ではまだ公開されていません。
出典
- KDDI「ローミングサービス提供エリア」案内ページ(2026年9月30日更新)https://www.kddi.com/corporate/kddi/public/roaming/
- 楽天モバイル プレスリリース「KDDIと楽天モバイル、新たなローミング協定の締結について」(2023年5月11日)https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/press/2023/0511_01/
- 楽天モバイル プレスリリース「ローミングに関して」(2026年8月12日)https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/press/2026/0812_01/
- 楽天モバイル「【重要】ローミングエリアに関してのお知らせ」(2026年9月5日)https://network.mobile.rakuten.co.jp/information/news/other/3876/
- ケータイ Watch「KDDI、楽天へのローミングを9月末で終了」(2026年8月7日・決算説明会の発言)https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/2131649.html
- 日本経済新聞「KDDI、10月から楽天へ回線貸し縮小 横浜・神戸など18政令市の市街地」(2026年9月)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC294DX0Z20C26A9000000/
- ケータイ Watch「楽天モバイルへのauローミング、10月からのエリアマップ公開」(2026年9月30日)https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/2144337.html
- ケータイ Watch 石川温の「スマホ業界 Watch」「楽天へのauローミングがいよいよ終了、都市部は約4割減か」(2026年9月)https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/ishikawa/2144589.html
- ITmedia NEWS「楽天モバイルのauローミング縮小 マップ公開、ほぼ半減エリアも」(2026年9月30日)https://www.itmedia.co.jp/news/article/2609/30/2000001885/
- ITmedia Mobile「KDDI、楽天モバイルへのローミング状況を公開 9月末から大幅減 10月から新たな枠組み」(2026年9月30日)https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2609/30/news075.html
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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