google-site-verification=tSMQ4FQhFx1RDsDFsOm7hyKcAa8tJgpr-DpePxzfGzM 実質賃金「7か月連続プラス」の数え方。同じ発表に「8か月連続」があり、1年前の「プラス」は確報で消えていた | 見出しの手前

実質賃金「7か月連続プラス」の数え方。同じ発表に「8か月連続」があり、1年前の「プラス」は確報で消えていた

9月、厚生労働省は公表しました。報道発表資料の1ページ目には、実質賃金についてこう書かれています。

現金給与総額 117.6※7ヵ月連続プラス

同じ朝、日本経済新聞は、時事ドットコムは速報で見出しを立てました。の間、実質賃金のニュースはいう形で毎月届いていました。それが今年は変わっています。

ただ、同じ報道発表資料の3行下には、もうの実質賃金が載っています。

現金給与総額 120.1※8ヵ月連続プラス

同じ7月分について並んでいるわけです。さらに前、7月分の速報はしたが、この3週間後の確報でマイナスに書き換えられました。

月数は、実質賃金の伸び率そのものではありません。伸び率がプラスかマイナスかを月ごとに判定して、それが何か月途切れずに続いたかを数えたものです。この記事では、その数え方が原資料のどこで決まっているのかを、厚労省の公表資料から書き出します。

何が報じられたか

9月の7月分速報で、事業所規模5人以上の1人あたり現金給与総額は、前年同月比4.7%増でした。報道発表資料は、この伸びについて添えています。基本給にあたる所定内給与は、賞与などの特別に支払われた給与はです。

この名目の伸びを物価で割ったものが実質賃金です。持家の帰属家賃を除く総合の消費者物価指数は前年同月比2.2%上昇で、実質賃金は2.4%増となりました。日本経済新聞のリードは書き、夏の賞与の伸びを要因に挙げています。

見出しのたどると、起点は1月分です。3月に公表された1月分速報で、実質賃金は1.4%増となり、報道発表資料には書かれていました。日本経済新聞も共同通信も、この日の見出しはです。その前の12か月、つまり1月分から12月分までは、すべてマイナスとして数えられています。

原典に当たる

毎月勤労統計調査は、事業所に対して毎月の賃金・労働時間・雇用を聞く調査です。7月分速報の概況によると、今回の調査対象は33,049事業所、回答は22,666事業所、回収率は68.6%でした。

ここで言う、1人の労働者の給料を追いかけた数字ではありません。厚労省の解説資料、名目賃金の出し方を次のように書いています。

名目賃金は、調査から推計した調査から推計した除して算出している。

支払われた給与の総額を、働いている人の総数で割った平均です。同じ資料は、この伸び率が影響を受けやすく、各労働者のよる賃金増の影響は受けづらいとも書いています。資料の例では、労働者の年齢構成が変わらず定期昇給だけがある場合、総人件費も労働者数も変わらないので、1人平均の給与は動きません。また、現金給与総額は所得税・社会保険料などを差し引く前の金額です。

実質賃金は、この名目賃金指数を消費者物価指数で割って作ります。ここで使う物価指数が2種類あります。

実質化に使う物価指数 厚労省の説明 公表開始
持家の帰属家賃を除く総合 実際に取引が行われている財・サービスに限定。労働者の生活の実感に近い購買力 1月分から
総合 国際比較を行うユーザーの便宜 3月分から

とは、持家を借家とみなした場合に支払われるであろう家賃のことです。実際にはお金が動かないため、厚労省は従来これを除いた物価指数で実質賃金を出してきました。厚労省の資料によると、1月分から実質賃金を公表しており、当時は帰属家賃がまだ算定されていなかったので、当時の使っていました。

割った実質賃金が加わったのは、3月分速報からです。5月付の厚労省の告知は、内閣官房での有識者の意見を踏まえ、国際比較をしやすくするために追加公表すると説明しています。6月分速報の報道発表資料を開くと、実質賃金はだけです。並ぶようになったのは、この半ほどのことです。

もう1つ、調査対象の入れ替えがあります。規模30人以上の事業所は、から毎年1月に一部が入れ替わっています。7月分速報の利用上の注意によると、1月の入れ替えでは、新旧の事業所で現金給与総額に–断層が生じました。この断層は過去にさかのぼって補正されません。

この入れ替えがあるため、厚労省はよる前年同月比も参考として出しています。前年同月と当月の両方で集計対象になった事業所だけを使い、労働者数も当月の数にそろえて計算した系列です。利用上の注意は、この系列が部分入れ替えやベンチマーク更新による断層の影響を含まない一方、サンプルサイズが小さくなると書いています。

報道との差分

月数は、少なくとも3つの選択で変わります。どの物価指数で割るか、速報と確報のどちらを使うか、本系列と共通事業所のどちらを見るか、です。順に原資料の数字を並べます。

1つ目は物価指数です。2月に公表された12月分速報の報道発表資料には、次の2行が並んでいました。

公表資料 帰属家賃を除く総合で実質化 総合で実質化
12月分速報 0.1%減 0.3%増
1月分速報 1.4%増 1.6%増
7月分速報 2.4%増 2.6%増

12月の物価上昇率は、帰属家賃を除く総合が2.4%、総合が2.1%でした。名目賃金の伸びは2.4%で、ちょうど前者と同じ値です。総合の上昇率のほうが0.3ポイント低かったため、どちらの物価で割るかによって、この月はマイナスにもプラスにもなりました。この記事で確認できた見出しは、いずれも厚労省が報道発表資料の先頭に置いている帰属家賃を除く総合の系列を使っています。

年単位でも同じことが起きています。分速報では、帰属家賃を除く総合で1.3%減の、総合で0.8%減のでした。どちらもマイナスですが、年数はとで違います。現在の付表でを見ると、総合で割った実質賃金は0.0%です。プラスでもマイナスでもない年があるため、連続が途切れています。

2つ目は速報と確報です。7月分の実質賃金は、速報と確報で符号が入れ替わりました。

項目 速報 確報
現金給与総額
実質 0.5%増 0.2%減
実質 1.0%増 0.3%増
回答事業所数/回収率 22,193/67.9% 25,569/78.2%

日本経済新聞は、速報の日に、確報の日に、両方を見出しにしています。確報の記事のリードは、速報値から0.7ポイント下方修正されたと書いています。

この改訂は、あとで出る数え方に効いてきます。12月分速報の、1月から12月までの全月をマイナスとして数えています。速報の時点でプラスだった7月も、確報値のマイナス0.2%で数えられているということです。一方で総合の系列は、確報でも7月が0.3%増のプラスとして残りました。12月分速報の総合の欄がなっているのは、7月にプラスがあり、8月から11月までがマイナスだったためです。

1月分も確報で下がりました。速報の1.4%増、4月の確報で0.7%増になっています。名目の現金給与総額は3.0%増から2.5%増に下がりました。1月は、速報では入れ替え前の事業所、確報では入れ替え後の事業所を集計する月です。符号はプラスのまま残ったので、起点は動いていません。

3つ目は本系列と共通事業所です。7月分速報の概況1ページ目には、共通事業所による現金給与総額の伸びが載っています。

本系列 名目 共通事業所 名目
1月 2.5% 2.3%
2月 3.4% 3.2%
3月 3.1% 2.8%
4月 3.6% 2.9%
5月 3.3% 3.1%
6月 4.0% 4.8%
7月 4.7% 2.8%

7月は本系列が4.7%、共通事業所が2.8%で、1.9ポイント離れています。6月は逆に共通事業所のほうが0.8ポイント高く、差の向きは一定ではありません。見出しの本系列の数字です。見出しとリードを確認できた範囲では、日本経済新聞と時事ドットコムの記事に共通事業所の2.8%は出てきません。

共通事業所の実質賃金は、7月分速報の公表資料には載っていません。記事内で、名目の2.8%から帰属家賃を除く総合の物価上昇率2.2%を単純に引くと、0.6ポイントほどになります。これは厚労省の公表値ではなく、指数どうしの割り算でもない概算です。それでも、本系列の2.4%増とは大きさがかなり違う、ということは読み取れます。

なぜそうなったか

いう言葉は、報道が作った数え方ではありません。厚労省自身が、報道発表資料の実質賃金の行に書き添えています。見出しはこの注記をほぼそのまま使っています。月数が見出しに入りやすいのは、発表資料の側にすでに書かれているからだ、と資料の構造からは言えます。

ただ、数えるためには、いくつかの決め事が前提になっています。第一に、系列をに決めることです。3月分より前は実質賃金がしかなかったので、この問題はありませんでした。今はあり、厚労省は帰属家賃を除く総合を系列として先頭に置いています。見出しがそちらを採るのは、資料の並び順と説明に沿った選択です。ただ、先ほどの12月分のように、の符号が分かれる月があります。

第二に、過去の月は確報値で判定されています。速報は公表日の時点で回収できた調査票だけで作ります。7月分は回収率67.9%の速報で出て、78.2%の確報で変わりました。利用上の注意は、確報値について「新たに集計の対象となった調査票の多くが速報値と異なる傾向であった場合、改訂の度合いが大きくなることがある」と書いています。見出しになるのは午前に出る速報です。確報は、7月分では3週間後、1月分では約1か月後に出ました。月数のうち最新の1か月は速報値、それより前の月は確報値という、性質の違う値をつないだものです。

第三に、符号だけを見ることです。の12か月を現在の付表で見ると、帰属家賃を除く総合の実質賃金は、1月のマイナス2.8%から12月のマイナス0.1%まで幅があります。数えると、マイナス2.8%の月もマイナス0.1%の月も同じ1か月です。12月のマイナス0.1%は、名目の2.4%と物価の2.4%がほぼ同じ値だった月でした。0.1ポイントの差が、続けるか、するかを分けています。

第四に、本系列の名目賃金は平均なので、どんな人が働いているかの構成や、調査対象の入れ替えの影響を受けます。共通事業所の系列は、この影響を取り除くために作られた参考値です。どちらがいうより、本系列は日本全体の平均賃金を推計し、共通事業所は同じ事業所で賃金がどう変わったかを見る、という役割の違いです。7月のように両者が1.9ポイント離れる月には、見出しのどちらの系列の話なのかで、受け取る印象が変わります。

原資料から引き出せる、数字の見方の手がかりをまとめておきます。

  • 見たら、どちらの物価指数で割った系列か
  • 最新月は速報値で、数週間後の確報で改訂されうること
  • 伸び率の大きさ。連続の月数は、0.1ポイントの差でも途切れる
  • 同じ資料の欄で、名目の伸びがどのくらい違うか

分からなかったこと

7月分の確報は、概況の公表予定によると9月の公表です。この記事は速報値で書いており、確報で7月分の2.4%増がどう改訂されるかは反映していません。

1月分が確報で1.4%増から0.7%増に下がったことを伝えた報道は、検索では見つけられませんでした。報じられなかったと断定はできず、確認できなかったという意味です。

共通事業所の実質賃金を厚労省が公表していない理由は、原典では確認できていません。に厚労省が開いた「毎月勤労統計の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会」の議事録ページは、取得時にHTTP 404で開けませんでした。また、7月に本系列と共通事業所の名目の伸びが1.9ポイント離れた理由分けて示した資料は、今回の公表資料の中には見つけられていません。

出典

一次情報

報道

同じカテゴリの記事:食料自給率37%は、何を何で割った数字か/ランサムウェア被害は、何を数えた件数か

コメント

タイトルとURLをコピーしました