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労働生産性「OECD28位」の数え方。同じ2023年の順位が、1年後の報告書では3つ上がっていた

日本の労働生産性がOECD加盟国の中で何位か。毎年12月に日本生産性本部が公表する、その順位の出どころです。12月に出た版では、の日本の時間当たり労働生産性は60.1ドル、38か国中28位でした。

この記事では、この何を何で割り、どの通貨換算で並べた数字なのかを報告書から書き出します。あわせて、前年の報告書と並べると、同じについての順位が書き換わっていることも確かめます。

何が報じられたか

共同通信の配信記事、見出しをとし、本文で時間当たりの生産性がOECD加盟38か国中28位だったと伝えています。続けて、の日本を26位と位置付けたため書いています。理由としては、人手不足を背景にした非正規労働者の割合の増加と、円安でエネルギーや原材料を海外から買う力が落ちたことを挙げ、結んでいます。当たり60.1ドル、OECD平均79.4ドル、1位アイルランド164.3ドル、米国は4位116.5ドルという数字も並んでいます。

前の12月には、同じ本部が公表しています。nippon.comは同日、いう見出しで、の時間当たり56.8ドル・29位、就業者1人当たり92,663ドル・32位を伝えました。

の時間当たりの順位は、12月の記事では29位、12月の記事では26位です。どちらの記事も、その時点の報告書どおりに書いています。

原典に当たる

版の報告書本文は、労働生産性を次の式で計っています。

労働生産性 = GDP÷ 就業者数

分子は国全体のGDP、分母は就業者の人数か、人数に労働時間を掛けた延べ時間です。分母を人数にすれば、延べ時間にすればなります。データはOECDの公表統計を中心に、各国統計局のデータで補っていると書かれています。

各国のGDPは自国通貨で集計されているので、並べるにはドルにそろえる必要があります。報告書は、実際の為替レートでは変動が大きくなるため、物価水準の違いを調整した購買力平価ドルに換算しています。購買力平価は、同じ品目を同じ量買うのに各国の通貨がいくら要るかから計算した交換レートで、の円ドルの値は1ドル=でした。同じ年の為替レートは期中平均で1ドル=です。

同じ報告書に、分母と換算の違う3つの順位が並んでいます。

指標 分母 ドル換算 値 順位
時間当たり労働生産性 就業者数×労働時間 購買力平価 60.1ドル 38か国中28位
就業者1人当たり労働生産性 就業者数 購買力平価 98,344ドル 38か国中29位
製造業の労働生産性 製造業の就業者数 為替レート 80,411ドル 35か国中20位

製造業だけ換算が違う理由も書かれています。OECDなどが出す購買力平価は国全体のGDP用で、産業別の値は公表されていない。そこで、為替で価格が調整されやすい貿易財の比重が高い製造業に限り、便宜的に為替レートを使う、という説明です。

報道で書かれるのは、この表の1行目です。

報道との差分

報告書は毎年、最新のデータでまでさかのぼって計算し直しています。版と版で、同じの日本の値を比べると次のようになります。

の日本 版 版
時間当たり 56.8ドル・29位 58.6ドル・26位
就業者1人当たり 92,663ドル・32位 95,838ドル・29位

版は、就業者1人当たりの32位を書いていました。版の付表では、は29位、が30位です。版の、版のデータではの順位としては残っていません。

版の付表10から、時間当たりの日本の順位を年ごとに並べると次のとおりです。

年 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
順位 20 21 23 28 28 28 26 28

共同通信の、この改定後の比べたものです。版の29位と比べれば、1つ上がった計算になります。比べる相手を改定後の値にそろえている点で、記事は報告書の注記どおりです。

理由の部分は、報告書の書き方と一致しません。報告書本文は、に順位が下がった要因として、実質経済成長率が鈍る一方で人手不足を背景に就業者が増え続け、実質の労働生産性上昇率が前年比-0.6%とぶりのマイナスになったことを挙げています。いう語は、今回取得した報告書本文・サマリー・プレスリリースのいずれにも見当たりませんでした。

なぜそうなったか

順位が書き換わる理由は、プレスリリースの注記に書かれています。OECDが随時行うGDPデータや購買力平価の改定と、日本のGDP基準改定伴い、すべての数値を過去にさかのぼって改定した、というものです。内閣府はこの日、度国民経済計算の年次推計を基準改定値として公表しています。報告書は別の注で、米国の総労働時間もOECDのデータベース上でさかのぼって改訂されたと書いています。分子のGDP、分母の労働時間、換算の購買力平価のどれもが、後から動きうるということです。

換算の選び方も、数字の印象を左右します。時間当たり60.1ドルを円に戻すとで、これは購買力平価1ドル=で掛け戻した値です。同じをの期中平均の為替レートで割ると、約37.8ドルになります。ただし他の国も為替レートで換算し直さないと順位は出せないので、この37.8ドルを28位と比べることはできません。

共同通信の記事にあるついては、報告書の中で2つの話が分かれています。製造業の比較は為替レートで換算しているため、円ベースでは上がり続けている日本の値が、ドルではの97,971ドルからまでに18%下がったと書かれています。一方、見出しの28位は購買力平価で換算した値で、報告書はの購買力平価がからへわずかに円高に動いたこと、その寄与が+0.2%だったこと、実勢の為替レートとは逆の動きになったことを注記しています。

水準と伸び率でも見え方が変わります。報告書は、時間当たりの実質労働生産性の上昇率をの平均で見ると日本は+0.8%で、主要先進7か国の中で米国に次ぐ2位だと書いています。順位が低いのは水準の比較で、伸び率の比較ではありません。

分からなかったこと

共同通信の記事にあるいう理由の出どころは、今回取得した公表資料からは確認できませんでした。記事は伝聞の形で書き、担当者の説明も引いていますが、どの場での説明かは分かりません。日本の労働時間にOECDがどの統計を使っているかも、報告書の付表にはあるだけで、今回はたどれていません。の順位の改定のうち、日本のGDP基準改定と購買力平価の改定がそれぞれどれだけ効いたのかは、報告書に分解がなく分かりません。為替レートで全加盟国を換算した場合の順位も計算していません。版は、これまでの例では12月に公表される見込みです。

出典

一次情報

報道

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