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「待機児童2,435人」で保育所の入りやすさを測ろうとしている人へ。申し込んで使えていない82,925人のうち、待機児童に数えられたのは2.9%

8月、こども家庭庁は公表しました。4月時点の待機児童数は2,435人で、前年より181人増えています。以来の増加です。

同じ資料には、保育所等に申し込んだ子の数と、実際に保育所等を利用している子の数も載っています。差し引くと82,925人です。このうち待機児童に数えられたのは2,435人、2.9%でした。残りの約8万人は、それぞれ別の理由で待機児童から外されています。この記事では、その外し方が資料のどこで決まっているのかを書き出します。

何が報じられたか

日本経済新聞は公表当日、いう見出しで伝えました。リードでは待機児童を子と説明し、東京都が保育料の無償対象を広げて利用希望が増えたこと、ピークのから9割ほど減ったことを書いています。

山陰中央新報がに配信した全国ニュースも、待機児童を同じく子と説明しています。同紙はの記事にいう見出しを付けました。教育業界ニュースのReseEdは、東京都が全国の半数ほどを占め、9月から歳の第1子の保育料を無償化していると書いています。

どの記事も数字は資料と一致しています。違いが出るのは、いう言葉の説明と、増えた理由の書き方です。

原典に当たる

資料の15ページに、待機児童の定義が1文で書かれています。

待機児童とは、保育園等の利用申込者数から、保育園等を実際に利用している者の数及び除いた数としている。

除外4類型は、次の4つです。

  • 特定の保育所等のみ希望している者
  • 求職活動を休止している者
  • 育児休業中の者
  • 地方単独保育施策を利用している者

目安も決まっています。3月付の厚生労働省の調査要領は、開所時間が保護者の需要に応えていることと、通常の交通手段で自宅から未満で登園できることなどを挙げています。特別な支援が必要な子の受け入れ体制が整っていないなど、やむを得ない理由がある場合は待機児童に含めるとも書いています。同じ要領は、企業主導型保育事業や幼稚園の預かり保育などを利用している子も待機児童に含めないとしています。

15ページの表では、この全部が列として並んでいます。4月の全国の値は次のとおりです。

4月 人数 未利用に占める割合
申込者数 2,729,681
保育所等を利用している者 2,646,756
申し込んだが保育所等を利用していない子 82,925 100%
 特例保育等・企業主導型保育事業を利用 19,042 23.0%
 特定の保育所等のみ希望 37,672 45.4%
 育児休業中 14,664 17.7%
 地方単独保育施策を利用 4,841
 求職活動を休止 4,271
 待機児童 2,435 2.9%

未利用の82,925人は、表の内訳を足すとちょうど一致します。いちばん大きいのは、待機児童の15倍を超えます。除外4類型の合計は61,448人で、待機児童の25.2倍です。名前はですが、表では特例保育等と企業主導型保育事業の利用者も別の列で引かれており、実際に待機児童から外れている区分は5つあります。

定義には経緯があります。資料は「平成3月に、有識者会議の検討を踏まえ、市町村ごとの運用上のばらつきを絞り込む方向に統一・是正し、待機児童の定義が広くなる見直しを行った」と書いています。それまでの運用は市町村ごとにばらついていました。見直し後の調査要領では、育児休業中の保護者も、入所できたときに復職する意向が継続的に確認できれば待機児童に数えることになっています。

さらにさかのぼると、厚生労働省が5月に出した資料は、待機児童を「保育所入所申込書が市区町村に提出され、かつ、入所要件に該当しているものであって、現に保育所に入所していない児童」と定義しています。保護者が求職中の人や地方単独事業を利用している人も対象になりうる、と書いていました。同じ資料には、第1希望の保育所に入るために待機している人が4割弱いたことも記されています。

報道との差分

1つ目の差は言葉の説明です。報道の、平易に言い換えた表現として使われています。ただ、資料の数え方をそのまま当てはめると、希望しても保育所等を利用できていない子は82,925人です。2,435人は、そこから5つの区分を引いた残りにあたります。

2つ目はです。期間を区切って並べると、こうなります。

各年4月 変化
待機児童 26,081 2,435 −90.7%
申し込んだが保育所等を利用していない子 103,431 82,925 −19.8%
除外4類型の合計 69,224 61,448 −11.2%
うち特定の保育所等のみ希望 38,978 37,672 −3.4%

待機児童が9割減ったのは資料の数字どおりです。同じ期間に、申し込んで利用できていない子は2割減にとどまりました。未利用のうち待機児童に数えられる割合は、の25.2%からの2.9%に下がっています。

いう言葉にも範囲があります。資料6ページのグラフはから始まり、その中ではの26,081人が最多です。厚生労働省の8月の資料では、4月の待機児童は26,383人で、より302人多い数字でした。ただし当時の資料は保育所の状況として集計しており、度の調査からは幼保連携型認定こども園などの特定教育・保育施設と特定地域型保育事業も加わっているため、同じ物差しで並べた比較ではありません。

3つ目は増えた理由です。東京都の待機児童は339人から1,113人に増え、全国の45.7%を占めました。資料13ページは、待機児童の多い自治体などへのヒアリングで出た理由を並べています。都内自治体の申込者数増の要因として、保育料第一子無償化についてとし、都心部の地価・家賃の高騰による子育て世帯の転入増加も挙げています。日経の見出しは、このうち無償化を理由として選びました。山陰中央新報のの見出しは、マンション開発を選んでいます。資料自体はいう書き方で、複数の要因を並べています。

なぜそうなったか

待機児童は「空き」ではなく「調整の結果」を数えている

の東京都を、前年と同じ物差しで比べてみます。申込者数は320,062人から323,891人へ3,829人増えました。東京都以外では39,383人減っています。東京都で申し込んだのに保育所等を利用していない子は、13,179人から14,894人へ1,715人増えました。そのうち待機児童の増加は774人です。残りは、特定の保育所等のみ希望が916人増、求職活動を休止が276人増などに振り分けられています。地方単独保育施策の利用は418人減りました。

待機児童の数は、申し込みのあと自治体が一人ひとりの状況を確かめ、どの区分に入るかを判断した結果です。その判断の基準が、上で見た調査要領です。たとえば入れるには、自治体が他の園の情報を提供したうえで、保護者がそれでも特定の園を待っている、という確認が要ります。

同じ基準でも自治体ごとに数字の形が違う

区分の判断が自治体の確認に委ねられているため、自治体ごとの差が表に表れます。4月の値では、横浜市は申込者73,834人で育児休業中が1,589人、待機児童は0人でした。名古屋市は申込者50,463人で育児休業中が0人、待機児童も0人です。大阪市は特定の保育所等のみ希望が1,233人で全国最多、待機児童は0人でした。申し込みの受け付け方や復職意向の確かめ方が違えば、同じ状況でも入る区分が変わりえます。どの自治体でどの運用をしているかは、この資料からは分かりません。

の見直しがためだったのは、この性質があるからだと読めます。見直しで定義は広がりましたが、確認の手順は自治体に残っています。待機児童の数を保育所の入りやすさの物差しとして使うなら、同じ資料の申込者数と除外4類型の列を一緒に見る必要があります。0人の自治体でも、特定の園を待っている子や、復職の時期を決められずにいる家庭がいるかどうかは、そちらの列でしか分かりません。

分からなかったこと

資料の定義から、以降の数え方に移る時点で何が変わったかを示す通知の原文には辿り着けませんでした。の調査要領は千葉県のサイトに掲載された写しで確認しており、こども家庭庁の現行版の全文は見つけられていません。4月の調査で新しい基準がどこまで適用されたかを示す当時の厚生労働省の公表ページは、国立国会図書館のアーカイブで開けませんでした。

育児休業中の除外はの5,528人からの19,752人まで増えていますが、その理由を説明した記述は今回の資料にはありませんでした。また、資料1ページによると、熊本県内のデータは令和熊本地震の影響で未確定で、全体が暫定値です。今後、数字が修正される可能性があります。

出典

一次情報

報道

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