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交通事故死者2,547人は24時間以内の数。同じ年を30日以内で数えると3,089人になる

1月、警察庁が令和中の交通事故死者数を公表しました。報道発表資料の概要は1行で、こう書かれています。

令和中の交通事故による死者数は、2,547人、統計が残る昭和以降で、最少となりました。

同じ日、共同通信はいう見出しで配信しました。日本経済新聞もいう見出しを立てています。数日後、レスポンスは、nippon.comは伝えました。

2,547という数字は、どの資料でも同じです。ただし、日本には交通事故で亡くなった人を数えた統計が3つあります。同じ令和を、別の系列は3,089人、さらに別の系列は3,343人と数えています。この記事では、その3つがそれぞれ何を数えているかを、警察庁・内閣府・厚生労働省の公表資料から確かめます。

警察庁の「死者」は、事故から24時間以内に亡くなった人

警察庁の、言葉の意味を次のように定めています。

死者 交通事故によって、発生から以内に亡くなった場合いう

側にも定義があります。

道路交通法第第1項第1号に規定する道路において、車両等及び列車の交通によって起こされた事故で、人の死亡又は負傷を伴うもの並びに物損事故をいう

つまりこの統計は、道路交通法上の道路で起きた事故を、警察が人身事故として把握し、その事故から以内に亡くなった人を数えたものです。後に亡くなった人は、この2,547人には入りません。

警察庁自身も、で区切ると国際比較ができないことを認識しています。令和版交通安全白書の別添参考には、こう書かれています。

警察庁では、交通事故死者数について交通事故発生後以内に死亡した者数を集計しているが、国際的な比較を行うため、交通事故発生から以内に死亡する者統計が必要となったことから、平成からは、死者に交通事故発生から経過後以内に死亡した者加えた集計を行っている。

この2つめの系列が、令和で3,089人です。死者2,547人に、を過ぎてから以内に亡くなった542人を足した数になります。

参考-3の第1図によると、令和の以内死者3,089人のうち、以内に亡くなったのが82.5%、以内で89.6%、以内で94.3%です。残りは事故からを超えて亡くなった人です。

誰が落ちるかにも偏りがあります。同じ資料の第2表を見ると、死者と、を過ぎてから亡くなった死者では、構成が違います。

令和 死者 死者
自動車乗車中 34.1% 24.0%
自転車乗用中 12.0% 23.6%
歩行中 34.9% 40.4%
65歳以上 55.9% 66.6%

自転車に乗っていた人と高齢者は、を過ぎてから亡くなる側に多く含まれています。で区切ると、この人たちが相対的に落ちます。

3つめの系列は、厚生労働省にある

人口動態統計は、死亡届に添えられた死亡診断書・死体検案書をもとに、死因を国際疾病分類分類した統計です。厚生労働省のによると、死因簡単分類20101範囲はV01からV98です。

令和の人口動態統計月報年計6月に公表されました。その第6表で、交通事故は3,343人です。

この系列は、警察庁の統計とは3つの点で数え方が違います。

1つめは、死亡までの時間で区切っていないことです。人口動態統計が見るのは死亡診断書に書かれた原死因であって、事故からの経過日数ではありません。そのかわり、数えるのはなので、前の年の事故で今年亡くなった人は今年に計上されます。事故の発生年で数える警察庁の統計とは、帰属する年がずれます。

2つめは、場所と手段の範囲です。V01からV98には、V90-V94の水上交通事故とV95-V97の航空及び宇宙交通事故が含まれます。e-Statに載っている確定数の第5.33表で令和の内訳を見ると、総数3,511人のうち水上交通事故が80人、航空及び宇宙交通事故が11人でした。V80-V89の361人あります。道路上の事故だけを数えた数字ではありません。

3つめは、集計する客体です。月報年計概況にある利用上の注意によると、この概数の集計客体は、前年以前発生のものを除きます。日本で亡くなった外国人は別に扱われます。警察庁の統計に国籍の限定はありません。

内閣府もこの違いを承知していて、白書では人口動態統計をそのまま載せず、加工した系列を使っています。令和版交通安全白書の特集-第1図にはいう線があり、その注にこう書かれています。

、厚生労働省統計資料基づき作成したものであり、当該年に死亡した者のうち原死因が交通事故によるものいう。なお、平成までは、自動車事故とされた者を計上しており、平成以降は、陸上の交通事故とされた者から明らかに道路上の交通事故ではないと判断される者を除いた数を計上している。

この線の最新値は令和の3,418人です。人口動態統計の3,511人から、水上の80人と航空の11人を引くと3,420人になり、白書の3,418人とは2人違います。白書の注記は除外の考え方だけを示していて、具体的な手順は書かれていません。

3つの数字を並べる

系列 発表元 数える範囲 令和 令和
死者 警察庁 道路上の事故。発生から以内の死亡 2,663人 2,547人
以内死者 警察庁 道路上の事故。発生から以内の死亡 3,221人 3,089人
交通事故 厚生労働省 原死因がV01-V98。日本における日本人 3,511人 3,343人
死者数 内閣府 上記から道路外と判断される分を除いたもの 3,418人 未掲載

令和でみると、見出しになった2,547人と、同じ年の人口動態統計の3,343人の差は796人です。どれかが間違っているのではなく、4つとも定義どおりの数字です。

政府の目標も、24時間死者で書かれている

共同通信と日本経済新聞の見出しにあった、第11次交通安全基本計画数字です。計画本文にはこう書かれています。

① 世界一安全な道路交通の実現を目指し,令和までに死者数を2,000 人以下とする。(※この2,000 人に平成から令和元年の間の死者数と以内死者数の比率の平均乗ずると2,400 人)

令和3月に決定された第12次交通安全基本計画も、同じ形式です。

① 令和までに死者数を1,900 人以下とし、世界一安全な道路交通を実現する。(※この1,900 人に令和からの間の死者数と以内死者数の比率の平均乗ずるとおおむね2,300 人)

目標の本体は死者で書かれ、以内死者は括弧の中に換算値として添えられています。1.22という比率は、参考-3の第1表から再現できます。令和からの以内死者を死者で割ると1.2032・1.2159・1.2322・1.2184・1.2096で、平均は1.2159です。令和の実績も3,089÷2,547で1.2128でした。

この比率を使うと、令和の結果は2つの見方ができます。死者で見ると、目標2,000人に対して2,547人。以内死者で見ると、換算目標2,400人に対して3,089人。どちらで見ても目標には届いていません。

一方、日本の順位を語るときに使われるのは以内死者のほうです。白書の参考-2は、国際道路交通事故データベースデータを持つ35か国を比べ、の人口10万人当たりの交通事故死者数について日本は2.6人で目に少ない、と書いています。この図の注2は明記しています。国内の見出しは死者、国際比較は以内死者。2つの系列は場面によって使い分けられています。

1月の数字と、6月の白書の数字も違う

数字が変わるのは定義の違いだけではありません。同じ警察庁の令和の数字も、公表の時期で変わっています。

令和 1月公表 令和版交通安全白書
事故発生件数
負傷者数 338,294人 338,508人
死者数 2,547人 2,547人

事故発生件数は減り、負傷者数は214人増えました。死者数は動いていません。1月の時点で報じられたいう数字は、半年後の白書では別の値になっています。

なお、警察庁が令和2月に出したには、資料の性質を示す注が付いています。「本資料は、令和2月までに入手したデータにより作成したものである。」交通事故の統計は、締め切った時点までに集まったデータで作られています。

報道が3系列に触れていた例

1月の報道で、以内死者や人口動態統計に触れたものが無かったわけではありません。Yahoo!ニュース エキスパートに1月に掲載された記事は、いう表現で2つめの系列に言及し、扱っています。

一方、本文を確認できた共同通信・レスポンス・nippon.comのには、いう語も、人口動態統計への言及も見当たりませんでした。差が出た理由を資料から特定することはできません。ただ、警察庁の1月の発表そのものが死者だけを扱っていること、以内死者は白書の別添参考にしか載らないこと、人口動態統計の公表が6月と9月であることは、いずれも公表資料から確認できる事実です。

分からなかったこと

白書の3,418人と、人口動態統計から水上・航空を引いた3,420人との2人の差は説明できませんでした。注記はとだけ書いており、判断の手順は資料から辿れません。

令和の出せませんでした。人口動態統計の令和は概数までで、確定数は9月時点でまだ公表されていません。同じ理由で、令和の3,343人のうち道路上の事故が何人かも分かりません。V01-V98の内訳は確定数でしか公表されていないためです。

警察庁の事故発生件数と負傷者数が1月公表値から改定された事実は2つの資料の差で確認できましたが、どの手続きで改定されたかを書いた資料には辿り着けませんでした。

出典

一次情報

報道

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