2026年10月3日、朝日新聞GLOBE+が記事を公開しました。
中国を舞台にしたTBS日曜劇場『VIVANT』(ヴィヴァン)第2シーズンが、中国のネットで話題になっているという内容です。
見出しは「シンシーはありえない」というツッコミと「ネット盛況」を前に出しています。
本稿では、この「現地の声」がどこから来たものかを確かめます。
材料は記事本文とTBSの公式発表です。
見出しに入った言葉と入らなかった言葉も並べて比べます。
何が報じられたか
まず番組側の事実です。
TBSの番組公式サイトのお知らせには、2026年7月26日(日)から堺雅人主演の第2シーズンを2クール連続で放送すると書かれています。
第1シーズンは架空の国「バルカ共和国」が舞台でした。
GLOBE+の記事によれば、第2シーズンは中国が舞台で、裏組織が暗躍する展開です。
GLOBE+の記事は2026年10月3日11時30分に公開され、同日22時13分に更新されています(ページ内の公開・更新日時の記録による)。
筆者は北京在住歴10年で、自身もこの作品のファンだと書いています。
記事の取材先は次の3者です。
広東省で法人向けITサービスを営む日本人実業家
浙江省のIT企業に勤める日本人駐在員
深圳に滞在し、中国のネット世論を分析しているXの著名アカウント「黒色中国」氏
視聴経路も書かれています。
TVerなど日本の公式配信は原則として国内向けで、中国から見るにはVPN(ブイピーエヌ|仮想専用回線)を使う必要があります。
記事によると、現地の多くの人は動画サイト「bilibili(ビリビリ)」に非公式に上げられた字幕付きの動画で見ています。
作品は中国語でそのまま「別班」と呼ばれています。
原典に当たる
見出しが「現地で話題」の根拠にした材料は、記事本文の中にあります。
中身を種類ごとに分けると、次の4つになります。
1つ目はbilibiliの再生数です。
筆者が「別班」で検索したところ、解説動画と第2シーズンの関連動画に一定の再生数があった、と記事は書いています。
ただし、検索した日時と、どの動画かを示す情報は載っていません。
2つ目は在中日本人2人の評です。
広東省の実業家は、中国の裏組織「シンシー」の名前を挙げて、第2シーズン開始早々の「大ズッコケ」と評しました。
記事は、この名前が中国語で「情報」を意味する「信息(xin xi)」から取っているとされる、と書いています。
実業家は、裏の機関に直球の言葉を使うのは「そのまんま過ぎ」だという見方です。
ほかに、中国人役の看守が軽くうなずく仕草や、日本人俳優の長い中国語のセリフの聞き取りにくさも指摘しています。
3つ目は、日本人を通して伝わった中国人の声です。
実業家の中国人の妻はbilibiliで視聴し、画面に流れる「弾幕」と呼ばれるツッコミのコメントも楽しんでいるそうです。
駐在員の中国人同僚からは「見るからに北京じゃない」「諜報なら公安ではなく国安だ」といった声が出ていると記事は書いています。
4つ目は黒色中国氏の観察です。
荒唐無稽さと妙なリアリティーが同居している点がこの作品の面白さだと述べています。
加えて、現地では男性キャラクター同士の関係を楽しむBL(ビーエル|Boys’ Love〈ボーイズ・ラブ〉=男性同士の恋愛を描く創作ジャンル)的な読み方が盛り上がっている、とも話しています。
まとめると、中国の視聴者本人が実名や公開アカウントで発言した引用は、本文に1件もありません。
微博(ウェイボー)や豆瓣(ドウバン)の評価点・投稿数のような、プラットフォームが集計した数値も出てきません。
報道との差分
見出しの要素ごとに、本文の根拠と並べました。
| 見出しの要素 |
本文にある根拠 |
| 中国舞台のVIVANT2 |
第2シーズンは中国が舞台と明記。 番組の放送開始はTBSの公式発表で確認できる |
| 現地で話題 |
筆者が検索したbilibiliの再生数(日時・動画は示されていない)と、在中日本人2人・1アカウントの観察 |
| 「シンシーはありえない」 |
シンシーの名前への評は「大ズッコケ」「そのまんま過ぎ」。 本文で「あり得ない」が出るのは、黒色中国氏が日本の公安による中国での傭兵雇用という設定を評した箇所 |
| ツッコミ入れつつ |
うなずく仕草、中国語の発音、北京らしくない街並み、公安と国安の取り違え |
| ネット盛況 |
bilibiliの弾幕を楽しむ視聴者の話(伝聞)と、BL的な読み方の盛り上がり(黒色中国氏の観察) |
見出しから落ちた論点もあります。
たとえば、架空の国でなく実名の中国を舞台にしたことで細部の違和感が目立つという筆者自身の分析です。
悪役の中国組織で日本人俳優が中国語を話す構図は「抗日ドラマ」の逆版のようだ、という駐在員の見方も入っていません。
日中関係が冷え込む中で話題のきっかけになっている、という結びの部分もそうです。
見出しのかぎ括弧は本文の直接引用ではありません。
複数の指摘を一言にまとめた要約になっています。
なぜそうなったか
ここからは、記事の構造から言えることだけを書きます。
編集部がどういう意図で見出しを付けたかは、資料からは確認できません。
1つ目は、観客席の問題(声が誰の標本なのか)です。
この作品は中国で正規配信されていると確認できる資料がなく、視聴は非公式のアップロードが中心だと記事は書いています。
そうなると、プラットフォームが公表する視聴数や評価点のような、集計された指標はそもそも得にくくなります。
結果として、現地の反応は取材者の知人や在中日本人の観察を通して集めるしかありません。
記事が描く「現地」は、中国のネット全体の標本というより、日中の両方に関わる人の目に入った範囲です。
2つ目は先行フレーム(中身を見る前に読み手が持っている枠)です。
日本の読者には「中国を悪役にした日本のドラマを、中国の人はどう見たか」という問いが先にあります。
「ありえない」というツッコミの形はこの問いへの答えに当てはまりやすく、見出しで中身を説明しなくても読み手に意味が通ります。
3つ目は語れる余白の大きさです。
シンシーが「情報」の音読みだという話は、中国語を知らない人でも一言で分かり、人に話しやすいネタです。
うなずく仕草や公安と国安の違いは、説明を足さないと伝わりません。
傭兵の設定に妙なリアリティーがあるという指摘も同じです。
見出しには、説明なしで成り立つ論点が選ばれやすくなります。
利害が見えるかどうか(誰が得をするか)は、今回はあまり効いていません。
記事に出てくる人は全員ファンか、好意的な観察者です。
広まらなかった同種の話として、同じ記事の中にある提案を挙げます。
主要な俳優の中国語をAIで吹き替えればよい、という実業家の提案です。
具体的な改善案ですが、見出しにも話題にもなっていません。
ツッコミ(笑える指摘)に比べて、一言で人に渡しにくい種類の話だからだと考えられます。
ただし、これは記事内での比較にとどまります。
他の作品の反応と量的に比べた資料はありません。
分からなかったこと
bilibiliの再生数は、記事が具体的な数を挙げていますが、検索日と対象の動画が示されていないため、本稿では確認していません。
そのため数値は載せていません。
中国での正規配信が本当にないかは、TBSや配信各社の発表で確かめられていません。
シンシーの名前の由来も、記事は「とされる」と書いていて、制作側の公式な説明は見つけられませんでした。
微博・豆瓣などでの言及量は、資料がないため分かりません。
見出しの付け方をどう判断したかは、媒体の内部の話なので外からは確認できません。
出典
- TBSテレビ 日曜劇場『VIVANT』番組公式サイト ニュース(第2シーズンを7月26日から2クール連続で放送) https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/news/
- TBSテレビ 日曜劇場『VIVANT』番組公式サイト トップ(2026年続編放送決定) https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
- 朝日新聞GLOBE+「中国舞台のVIVANT2が現地で話題「シンシーはありえない」ツッコミ入れつつネット盛況」2026年10月3日公開・同日更新 https://globe.asahi.com/article/16920045
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
コメント