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カスハラ義務化。指針は「クレームの全部ではない」と書く

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10月、改正労働施策総合推進法が施行され、カスタマーハラスメントへの対策が事業主の義務になりました。これにあわせて、新潟県上越市の金融機関で県警が対応訓練を行ったと朝日新聞が報じています。見出しに出てくるのはです。一方で、厚生労働省の指針、クレームとカスハラの境目を書くことに多くの紙幅を使っています。見出しになった部分と、ならなかった部分を原典で確認します。

何が報じられたか

朝日新聞の記事によると、訓練は10月、日本政策金融公庫高田支店上越署が行いました。客役の署員が言っての融資を迫り、大声を出して机をたたきます。別の職員が非常通報装置で警察に知らせ、駆けつけた警察が対応を引き継ぐ、という想定です。記事は、この訓練を10月の改正法施行と結びつけて報じています。

見出しの法律の施行日と合っています。厚生労働省のWebマガジンによると、改正法の公布は令和6月、施行は令和10月です。

原典に当たる

根拠となる法律は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」です。事業主が何をするべきかは、同法第第4項に基づく指針「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」が定めます。富山労働局のページによると、指針は令和2月に公布されました。ここでは、12月の労働政策審議会 雇用環境・均等分科会出された指針案本文を読みました。

指針案は、カスハラを次の3つの要素をすべて満たすものと定めています。

  • 顧客・取引の相手方・施設の利用者など、事業に関係する人の言動であること
  • 業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること
  • 労働者の就業環境が害されること

そのうえで指針案は、カスハラに当たるわけではないと明記しています。社会通念上許容される範囲で行われたものはであり、カスハラには当たりません。障害のある人が合理的配慮を求めることもカスハラではないと書かれています。範囲を超えるかどうかは、言動の目的、経緯、業種、頻度、労働者側の対応に問題がなかったかなどを総合的に考えて判断します。事業主や労働者側の不適切な対応が原因になっている場合もある、とも書かれています。

事業主に求められる措置は、方針の明確化と周知、相談体制の整備、起きた後の迅速で適切な対応、特に悪質なものを抑止するための措置、プライバシー保護と不利益な取扱いの禁止の周知、の5つです。警察が出てくるのは主にです。警察へ通報する、と例として挙げられています。

報道との差分

記事の見出し・訓練の内容と指針案の構成を並べると、次のようになります。

論点 指針案 朝日新聞の見出し・記事
義務の対象 事業主の雇用管理上の措置 表現
クレームとの境目 3要素で定義。苦情の全てが該当するわけではないと明記 見出しにはない
警察の役割 犯罪に該当し得る言動の通報先 見出しの中心
想定場面 対面に加え、電話・SNS・メールも含む 窓口での対面の威圧

訓練の想定、指針案の当てはまります。記事に書かれた事実と指針の内容は食い違っていません。違いは選び方にあります。指針案の大半を占めるいう判断の話や、相談体制などの社内の措置は、見出しには入っていません。

見出しのいう書き方では、義務を負うのが誰なのかが分かりにくくなります。指針案で措置を講じる義務があるのは事業主で、顧客側の行為そのものを新しく罰する作りではありません。ただし、法律の条文全体を見て罰則を確認する作業はしていないため、ここでは指針案の書き方だけを示しています。

なぜそうなったか

理由として考えられるのは、資料と報道の形式の違いです。指針は、全業種の事業主が自分の職場で判断するための基準です。そのため定義、判断要素、例示、留意点が中心になります。一方、地方面の記事は伝える形をとります。県警の訓練は日時・場所・登場人物がはっきりしていて写真も撮れるため、記事にしやすい題材です。境界の判断はとしか書けず、出来事として記事にしにくい性質があります。

数字の扱いにも、似たような構造があります。厚生労働省の企業調査を見ます。対象は全国の従業員30人以上の企業・団体で、12月に実施され、有効回答は/発送です。過去間に相談があった企業は27.9%で、令和度より8.4ポイント増えました。一方、労働者調査では、過去間に迷惑行為を受けた人は10.8%で、4.2ポイント減っています。

同じ報告の中で、企業が受けた相談は増え、労働者の経験は減っています。この2つの数字は数えているものが違います。前者は、後者はです。相談窓口が整うと、前者だけが増えることもあり得ます。書くか書くかは、どちらの数字を選ぶかで変わります。資料からは、どちらの要因が大きいかは確認できません。

分からなかったこと

令和2月に公布された指針の確定版の本文は、今回取得できていません。ここで引用した定義や例示は12月の案に基づいており、確定版で文言が変わった可能性があります。また、検索結果には告示番号をするものがありましたが、厚生労働省の原文では確認できなかったため、本文には書いていません。他の報道機関がこの訓練をどう報じたかも確認していないため、各社の比較はしていません。改正法本体の罰則規定も、条文での確認ができていません。

出典

  • 厚生労働省 労働政策審議会 雇用環境・均等分科会資料「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」12月 https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001608225.pdf
  • 厚生労働省 雇用環境・均等局 雇用機会均等課「職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要」5月 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001259093.pdf
  • 厚生労働省 Webマガジン8月 https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/series/20260820.html
  • 富山労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/customerharassmentshishin_00001.html
  • 厚生労働省 https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/law-amendment/
  • 朝日新聞Yahoo!ニュース配信 10月 https://news.yahoo.co.jp/articles/30c858cb7db4a2e29957142dc45103c6650a48b4
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。

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