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「生涯未婚率」男性29.88%は、生涯でも50歳ちょうどでもない。同じ国勢調査から25.57%も出る数え方

9月、総務省統計局は令和国勢調査の公表しました。NHKは同じ日に、総人口が1億2297万人余りとなり、からおよそ317万人減ったと報じています。この集計には、男女・年齢別に数えた表も入っています。いわゆる、この表から計算される数字です。

この記事の見出しの29.88%は、統計局が公表した表から、国立社会保障・人口問題研究所同じ定義で計算したの男性の値です。社人研自身のの値はまだ公表されていません。同じ調査の同じ年齢層から、数え方を変えると25.57%も26.96%も出てきます。

名前が付いていても、この数字は一生を追いかけたものではありません。言い換えられたあとも、50歳ちょうどの人を数えたものではありません。この記事では、その数え方が原資料のどこで決まっているのかを書き出します。

何が報じられたか

直近の値としてよく引用されるのは、国勢調査にもとづく男性28.25%、女性17.81%です。日本経済新聞は7月、いう見出しでこの数字を伝えました。リードは書き、社人研がの国勢調査をもとに算出したと説明しています。

同じリードには、次の一文もあります。

実はこの数字、今回の公表で跳ね上がりました。もととなる国勢調査の計算方法が変わったためです。

記事は続けて、総務省統計局が長年、配偶関係が人を除いて計算していたと書いています。この扱いは、あとで見るようにの値にも効いてきます。

名前の変更も報じられています。日本経済新聞は12月の記事で、同年5月に政府が表現を変更したと書きました。大和総研のコラム、政府がこの言葉を今後使わず呼び換える模様だと書き、その根拠として5月付の東京新聞夕刊を挙げています。

それでもいう言葉は残っています。9月のマネーの達人の記事は、見出しに括弧付きで使い、男性は、女性は書きました。本文では、この表現が内閣府の男女共同参画白書から来ていること、収録の最新値がであることを明記しています。

原典に当たる

数字の出どころは、社人研が毎年刊行している表です。版の表題は「性別50歳時の未婚割合,有配偶割合,死別割合および離別割合:1920~」。注には次のように書かれています。

総務省統計局より算出。45~49歳と50~54歳における割合の平均値。*不詳補完値に基づく。

定義はこの1行に詰まっています。国勢調査の5歳刻みの表から、歳の未婚割合と歳の未婚割合を取り出し、2つを足して2で割る。対象は45歳から54歳までの分の人たちで、その平均を呼んでいます。50歳ちょうどの人だけを数えた値ではありません。

定義は国勢調査の側にあります。統計局の結果の概要用語の解説は、配偶関係を区分するとし、書いています。婚姻届を出していない同居のパートナーを配偶者として回答した人は、この調査ではなります。離婚した人や配偶者と死別した人は入りません。

表の名前は、このほどで変わっています。社人研のサイトに残る各年版の表を開くと、次のとおりでした。

人口統計資料集 表の表題
版 性別生涯未婚率および初婚年齢
版 性別,50歳時の未婚割合,有配偶割合,死別割合および離別割合
版以降 性別,50歳時の未婚割合,有配偶割合,死別割合および離別割合

版で表題の前に出て、括弧書きになりました。版でその括弧書きが消えています。さかのぼると、内閣府の平成度高齢社会白書の表はいう表題で、注に書いていました。出典は社人研の人口統計資料集です。

いまの白書でも呼び方はそろっていません。令和版厚生労働白書の図表は、令和版の図はです。令和版の注は、この数字を説明したうえで、実際の計算はだと書いています。同じ図には将来の推計値もあり、は男性30.43%、女性22.23%です。

数字の長い流れは表で追えます。男性は2.17%、2.60%、5.57%、12.57%、20.14%、28.25%。女性は4.45%、4.33%、5.82%、10.61%、17.81%です。時点では女性のほうが高く、に男性が上回りました。

報道との差分

表の注にある、この数字のもう1つの分かれ目です。国勢調査では、配偶関係の欄が空いていたり、調査票そのものが回収できなかったりした人がなります。不詳をどう扱うかで、同じ調査から違う数字が出ます。

の国勢調査で、社人研と同じ定義当てはめると、次のようになりました。いずれも統計局がe-Statで公表した第表の全国の値から計算しています。

国勢調査の数え方 男性 女性
原数値。配偶関係分母に含める 25.57% 17.22%
原数値。配偶関係分母から除く 26.96% 17.82%
不詳補完値 29.88% 19.58%

男性で最大4.31ポイントの幅があります。原数値では、歳男性4,150,537人のうち217,267人、率にして5.23%の配偶関係がでした。

についても、並べられる数字が複数あります。

の値 男性 女性 数え方
男女共同参画白書 特-3図の 24.6% 15.8% 50歳ちょうど。不詳含む構成比
社人研 表 28.25% 17.81% 歳の平均。あん分等による不詳補完値
統計局 CANCEISによる遡及集計 28.46% 17.90% 歳の平均。9月公表

令和版男女共同参画白書は、同じページの中で2つの数字を使っています。配偶関係別の人口構成を説明する段落では、50歳時点の男性の未婚を24.6%としています。その少し下の段落では28.25%とし、書いています。前者は50歳ちょうどの人を不詳込みで数えた構成比、後者は歳の平均を不詳補完値で出した割合です。28.25%を直すと約3.5人に1人で、むしろ24.6%のほうに近い値です。

そのうえで、からへの変化を出すとき、どの値を使うかで差が変わります。

比べ方 男性 女性
CANCEIS遡及 → CANCEIS 28.46% → 29.88% 17.90% → 19.58%
社人研→ CANCEIS 28.25% → 29.88% 17.81% → 19.58%

統計局は結果の概要の中で、増減数や増減率は「同一の補完方法による不詳補完値又は原数値同士の比較により算出している」と書いています。の遡及集計が出たのはそのためです。社人研の表にある28.25%と、の表から計算した29.88%をそのまま並べると、男性で0.21ポイント、補完方法の違いが上乗せされます。

同じことは前にも起きています。社人研の表での男性の値は、版から版までは23.37%でした。版からは24.77%に置き換わり、注に付きました。女性は14.06%から14.89%です。7月の日本経済新聞が書いたのも、この不詳の扱いの切り替えを指しています。

なぜそうなったか

「生涯」と呼ばれてきた理由

大和総研のコラムは、この指標がとし、50歳以上の女性が出産することはまれなので、出生率の算出や将来の人口推計では50歳時の未婚割合を生涯未婚率とみなしても大きな違いはなかった、と説明しています。

50歳を過ぎてから初めて結婚する人がどのくらいいるかは、人口動態統計で確かめられます。の確定数では、初婚の夫のうち、結婚生活に入ったときに50歳以上だったのはでした。初婚の妻はのうちです。歳の男性の初婚はで、の歳の未婚男性1,437,013人と比べると0.21%にあたります。年と時点がずれる比較なので桁の目安にとどまりますが、で動く割合は小さいと言えます。

国勢調査で同じ世代を後に追っても、形は同じです。同じCANCEISの補完値同士で比べました。

世代 男性の未婚割合 女性の未婚割合
歳 → 歳 38.70% → 34.37% 26.44% → 23.13%
歳 → 歳 32.42% → 30.64% 21.51% → 20.43%
歳 → 歳 30.04% → 29.11% 19.26% → 18.73%
歳 → 歳 26.87% → 26.24% 16.54% → 16.18%

40代前半まではで数ポイント下がりますが、50代に入ると下がり幅は1ポイントを切ります。この下がり幅には、結婚のほかに、未婚と既婚で死亡率が違うことや、国外との出入り、補完の誤差も混ざっています。国勢調査の表からはそれぞれの寄与を分けられません。それでも、50歳前後の値がその後大きくは動かないことは読み取れます。いう呼び方は、この性質に寄りかかった近似でした。

近似である以上、ずれはあります。50歳以降に結婚する人は毎年数千人規模でいます。また、歳の平均は、その時点で歳だった人たちの状態を表すもので、20代・30代の人たちが50歳になったときの値を示すものではありません。見出しにあると、いま若い世代の将来の値のように読めてしまいます。呼び方の変更は、このずれを名前の側で解消したものと読めます。ただし、変更を決めた政府の文書そのものは確認できていません。

不詳の補い方で数字が動く理由

不詳補完値のほうが原数値より高くなるのは、不詳の人の中に未婚の人が多く含まれるとみなされているからです。統計局が7月の有識者会議に出した資料は、の不詳補完の効果として書いています。未婚の人は、調査票が回収しにくい層の1つとして扱われています。

の補完はいう方法でした。統計局の説明資料によると、市区町村ごとに、世帯の種類・男女・年齢・国籍・配偶関係・住宅の建て方で区切った表を作り、不詳を、不詳でない人の構成比に応じて割り振ります。は、カナダ統計局が開発したCANCEISという方式に切り替わりました。統計局はイギリスやドイツなどの人口センサスでも使われていると説明しており、の結果も同じ方式で計算し直して公表しています。

の歳男性で、補完の前後を比べてみます。原数値で配偶関係が分かっている3,933,270人のうち、未婚は27.57%でした。補完によって配偶関係が決まった人は、年齢不詳の人に年齢が割り当てられる分も含めて、単純計算で334,979人になります。この間に未婚は223,468人増えました。補完で加わった人のうち約の2が未婚に振り分けられたことになります。どの条件の人が未婚に振り分けられたかの内訳は、公表資料からは確認できません。

整理すると、いう1つの言葉の後ろには、年齢をどう取るか、不詳をどう扱うかいう2つの選択があります。社人研の表は、歳の平均と不詳補完値を選んでいます。報道で見かける数字がどの選択の結果かは、出典の表と注まで戻らないと分かりません。

の値が社人研から公表されれば、いう形の見出しが出てくるかもしれません。そのときに確かめられることは3つあります。数字が歳の平均か、50歳ちょうどの値か。不詳を補った値か、除いた値か。比べているの値が、と同じ補完方式で計算し直したものか。この3つがそろっていれば、差は世代の入れ替わりを映した数字として読めます。そろっていなければ、差の一部は数え方の違いです。

分からなかったこと

政府が5月に呼び方を変えたという点は、日本経済新聞と大和総研のコラムで確認しましたが、どちらも東京新聞の報道を典拠にしています。変更を決めた政府の通知や決定文の原文には辿り着けませんでした。社人研の表題の変化は各年版で確認できましたが、変更理由を社人研が説明した文書も見つけられていません。

社人研が国勢調査の値をいつ、どの補完方式で人口統計資料集に載せるかは未確認です。本記事のの値は、統計局の表から筆者が社人研の定義に合わせて計算したもので、社人研の公表値ではありません。

人口統計資料集版・版の注は画像になっており、当時の定義文をテキストで確認できませんでした。CANCEISが不詳の人をどのような条件で未婚に振り分けたかの詳細も、今回の公表資料の中には見つけられていません。

出典

一次情報

報道・解説

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