2026年9月26日朝、NHKニュースが台風26号について「沖縄であす非常に強い風」という見出しを出しました。
同じ朝に気象庁が出した台風の予報データでは、この台風の強さの階級は最大でも「強い」です。
「非常に強い」は付いていません。
報道が誤っているわけではありません。
気象庁には「非常に強い」という言葉を使う物差しが2本あり、見出しはそのうち片方を使っています。
この記事では、2本の物差しの定義を気象庁の原資料で確かめ、見出しの言葉と予報の数字を並べます。
何が報じられたか
NHKニュースは2026年9月26日6時21分に記事を配信し、7時1分に更新しました。
見出しは「台風26号 沖縄であす非常に強い風 関東中心に土砂災害に注意を」です。
取得できた冒頭部分には、沖縄の南にある台風26号が発達しながら北上して沖縄県に近づく見込みであること、27日は沖縄県で非常に強い風が吹き、海上は大しけになるおそれがあることが書かれていました。
冒頭部分には風速・波の高さ・雨量の数字はありませんでした。
一次情報は気象庁の台風情報です。
気象庁の台風データ(2026年9月26日6時45分発表、6時時点の実況)によると、台風26号は沖縄の南(北緯22.3度・東経127.5度)を北北西へ時速10kmで進んでいます。
中心気圧は996hPa、中心付近の最大風速は25m/s、最大瞬間風速は35m/sです。
気象庁のデータでは、アジア名はスリゲ(Surigae)です。
原典に当たる
気象庁が「非常に強い」という言葉を使う場面は2つあります。
1本目は、風そのものの強さを表す予報用語です。
気象庁の「風に関する用語」では、風速を4段階に分けています。
「やや強い風」は10m/s以上15m/s未満、「強い風」は15m/s以上20m/s未満、「非常に強い風」は20m/s以上30m/s未満、「猛烈な風」はおよそ30m/s以上、または最大瞬間風速が50m/s以上です。
天気予報や警報・注意報の解説で、ある地域にどれくらいの風が吹くかを伝えるときに使います。
2本目は、台風の勢力を表す「強さ」の階級です。
気象庁の「台風の大きさと強さ」によると、台風の強さは中心付近の最大風速(10分間平均)で分けます。
「強い」は33m/s以上44m/s未満、「非常に強い」は44m/s以上54m/s未満、「猛烈な」は54m/s以上です。
最大風速が33m/s未満のときは、強さを表す言葉を付けません。
同じページには、風速25m/s以上の風が吹いているか吹く可能性がある範囲を「暴風域」と呼ぶことも書かれています。
そもそも「台風」と呼ぶ基準も、同じく最大風速で決まっています。
気象庁の「台風とは」では、北西太平洋または南シナ海にある熱帯低気圧のうち、最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s以上のものを台風と定義しています。
整理すると、1本目は「その場所に吹く風」を測る物差しで、2本目は「台風の中心付近で最も強い風」を測る物差しです。
同じ「非常に強い」でも、1本目は20〜30m/s、2本目は44〜54m/sを指します。
下限で比べると2倍以上の開きがあります。
報道との差分
気象庁の6時45分発表の予報を、時刻ごとに並べます(いずれも中心付近の値)。
- 26日6時(実況):996hPa、最大風速25m/s、最大瞬間風速35m/s、強さの表現なし
- 26日18時(12時間後):990hPa、30m/s、瞬間45m/s、強さの表現なし
- 27日6時(24時間後):宮古島の東南東約230km、975hPa、35m/s、瞬間50m/s、階級「強い」
- 28日3時(45時間後):沖縄本島近海、960hPa、40m/s、瞬間60m/s、階級「強い」
- 29日3時(69時間後):日本の南、960hPa、40m/s、瞬間60m/s、階級「強い」
- 10月1日3時(117時間後):日本の南、970hPa、35m/s、瞬間50m/s、階級「強い」
予報期間を通じて最大風速の最大値は40m/sです。
「非常に強い」台風の下限44m/sには届いていません。
この予報のとおりなら、台風26号は「強い台風」のまま沖縄本島近海に達します。
一方で、NHKの見出しの「非常に強い風」は1本目の物差しの言葉です。
27日に沖縄県で20m/s以上30m/s未満の風が吹く見込みを伝えていると読むのが、用語の定義に沿った読み方です。
見出しと気象庁の予報は矛盾していません。
ただし、見出しには「台風26号」と「非常に強い」が数文字の間隔で並んでいます。
2本目の物差しを知っている読者が「非常に強い台風」と読み替える余地は、見出しの字面の上では残っています。
逆方向の差もあります。
予報では28日3時の最大瞬間風速は60m/sです。
1本目の物差しでは、最大瞬間風速50m/s以上は「猛烈な風」に当たります。
ただしこれは中心付近の値で、沖縄の特定の地点でその風が吹くという予報ではありません。
地点ごとの予想風速は、今回取得できた資料には含まれていませんでした。
なぜそうなったか
差が生まれる原因は、報道側の書き方よりも、気象庁の用語の体系にあります。
気象庁は、地域に吹く風の予報と、台風の勢力の分類を別の表で定めています。
どちらの表にも「強い」「非常に強い」「猛烈な」という同じ形容詞を使っています。
数値の範囲は重なっていません。
ニュースの見出しは字数が限られます。
「沖縄であす非常に強い風」は11字で、地域・日付・風の程度を伝えています。
予報用語をそのまま使っているので、言葉の選び方としては気象庁の定義に忠実です。
一方で、読者の側には台風報道で聞き慣れた「非常に強い台風」という言い回しがあります。
資料からは読者がどう受け取ったかは確認できませんが、2つの物差しが同じ言葉を共有している以上、見出しを正確に書いても読み違いが起きる構造になっています。
台風の強さが予報の途中で変わることも、言葉がずれやすい理由です。
実況の25m/sは「台風」の基準17m/sを超えていますが、強さを付ける33m/sには届いていません。
そのため、26日時点の台風26号は、強さの言葉が付かない「台風」です。
24時間後には「強い台風」になる予報です。
同じ台風でも、どの時刻の情報を見るかで呼び方が変わります。
分からなかったこと
NHKの記事は冒頭部分しか取得できませんでした。
そのため、見出しにある「関東中心に土砂災害」が台風26号によるものか、別の前線や雨雲によるものかは確認できていません。
関東の雨量の予想値も確認できていません。
沖縄県内の地点ごとの予想最大風速、「大しけ」が示す波の高さの予想値も、今回の資料では確認できませんでした。
他社の見出しとも比べていません。
気象庁の予報は数時間ごとに更新されるため、この記事の数字は2026年9月26日6時45分発表時点のものです。
最新の予報は気象庁の台風情報で確認してください。
出典
- 気象庁 台風情報データ(台風第26号・2026年9月26日6時45分発表)https://www.jma.go.jp/bosai/typhoon/data/TC2632/specifications.json
- 気象庁「台風の大きさと強さ」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-3.html
- 気象庁「台風とは」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-1.html
- 気象庁 予報用語「風に関する用語」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kaze.html
- NHKニュース「台風26号 沖縄であす非常に強い風 関東中心に土砂災害に注意を」2026年9月26日6時21分配信・7時1分更新 https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20260926de52529
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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