ソフトバンクの新人右腕、鈴木豪太投手の1年目を分析した記事が、2026年10月27日にパ・リーグ.comに載りました。
記事には「1.74」という数字が出てきます。
同じ値は日本野球機構(NPB)の公式記録の防御率にもあります。
二つの1.74は別々の指標です。
この記事では、公式記録の元の数字から両方を計算し直し、一致する理由と、記事の中で外から確かめられる数字と確かめられない数字を分けます。
何が報じられたか
パ・リーグ.comは2026年10月27日16時30分に「鷹のルーキー右腕・鈴木豪太を支える2つの武器」を公開しました。
筆者はデータスタジアムです。
記事の注記には「文章、表中の数字はすべて2026年シーズン終了時点」とあります。
記事によると、鈴木投手は2025年ドラフト3位で大阪商業大から入団しました。
1年目から一軍に定着し、日本シリーズでも登板しています。
記事は40試合に登板したこと、与四球率が1.74だったことを挙げています。
WHIP(ウィップ。
1イニングに許した安打と四球の合計)はパ・リーグ救援部門でトップと書いています。
平均球速は約145キロで、他のリリーバーと比べて速い方ではないとしています。
見出しの「2つの武器」はストレートとカットボールです。
ストレートは投球の54.2%が高めで、高めのスイング奪空振り率は34.4%。
リーグ平均を約13ポイント上回ると記事は書いています。
カットボールは4月までの投球割合が4.2%でしたが、8月以降はストレートを抜いて最も多く投げた球種になりました。
ボール先行時のカットボールは19打数1安打で、被打率は.053です。
原典に当たる
防御率や四球の数は、NPBが公開している「2026年度 福岡ソフトバンクホークス 個人投手成績」で確かめられます。
ページの更新日は2026年10月28日です。
鈴木投手の行に載っている数字は次のとおりです。
登板40、4勝1敗、0セーブ、5ホールド、勝率.800、対戦打者178、投球回46.2、被安打29、被本塁打3、四球9、故意四球0、死球1、三振40、暴投0、ボーク1、失点10、自責点9、防御率1.74。
読むときに注意が要るのは投球回の「46.2」です。
これは小数の46.2回ではなく、46回と3分の2回(アウト140個)を表します。
実際に計算すると確かめられます。
防御率は自責点×9÷投球回で求めます。
46と3分の2で割ると9×9÷46.667=1.736で、四捨五入すると公式記録の1.74と一致します。
小数の46.2で割ると1.753になり、1.75とずれます。
同じ式の自責点を四球に置き換えたものが与四球率です。
四球9×9÷46.667=1.736で、これも1.74になります。
防御率と与四球率が同じ値になったのは偶然の重なりです。
シーズンの自責点と四球が、どちらも9で同数だったことによります。
死球1を四球に足して計算すると10×9÷46.667=1.93になります。
記事の1.74と一致するのは死球を含めない計算です。
記事は与四球率の定義を書いていません。
それでも、数字の側からは四球だけを数えたと読み取れます。
記事は鈴木投手のWHIPの値そのものを載せていません。
公式記録から計算すると(被安打29+四球9)÷46.667=0.814で、約0.81です。
ほかに公式記録から出せる値として、奪三振率(9イニングあたりの三振数)は40×9÷46.667=7.71、三振と四球の比は40÷9=4.44です。
報道との差分
| 項目 |
パ・リーグ.com(10/27) |
NPB公式記録(10/28更新) |
照合 |
| 登板 |
40試合 |
40 |
一致 |
| 与四球率 |
1.74 |
四球9・投球回46.2から計算すると1.74 |
計算で一致(死球を含めない場合) |
| 防御率 |
本文では扱わない |
1.74 |
与四球率と同じ値 |
| WHIP |
救援部門トップ(値は書かれていない) |
計算すると0.81 |
順位の対象条件は書かれていない |
| 勝敗・ホールド |
本文では扱わない |
4勝1敗5ホールド |
記事では触れていない |
| 失点と自責点 |
本文では扱わない |
失点10・自責点9 |
自責点にならない失点が1 |
| 球種別の割合・空振り率 |
54.2%、34.4%、4.2%、.053ほか |
公式記録に項目がない |
照合できない |
記事の数字には二種類あります。
一つは公式記録から誰でも計算し直せる数字で、登板数と与四球率がこれに当たります。
どちらも公式記録と矛盾しません。
もう一つは、投球ごとのコース・球種・スイングを記録したトラッキングデータから出した数字です。
見出しの「2つの武器」を支える数字は、すべてこちらに入ります。
記事にはストレートが5月20日以降に長打を打たれていないとも書かれています。
一方、公式記録ではシーズン全体の被本塁打が3本です。
どの球種で、いつ打たれたかは公式記録からは分からないため、この二つの記述は矛盾しているとも、整合しているとも判定できません。
なぜそうなったか
記事が防御率を前面に出さず、与四球率とWHIPを挙げた理由は、資料の構造から説明できます。
救援投手は1試合の投球回が短く、鈴木投手の場合も40登板で46回と3分の2です。
投球回が少ないと、自責点が1点違うだけで防御率が大きく動きます。
自責点9を10に置き換えて計算すると1.93になります。
投球回が少ないほど、1点の重さは増します。
与四球率やWHIPも同じ投球回で割るので、この揺れからは逃れられません。
ただし、記事は「球速が速い方ではない投手がなぜ抑えられるか」を説明する題材として、制球の指標を選んでいます。
データスタジアムはトラッキングデータを持つ会社なので、記事の重心は公式記録に載らない球種別の数字に置かれています。
公式記録で確かめられるのは入口の数字だけで、本題の分析は提供元のデータに頼る作りです。
WHIPの「救援部門トップ」は、比べる母集団の決め方で結果が変わる種類の主張です。
最低何イニング、何登板を対象にしたかによって、上位に入る投手が入れ替わります。
記事にはこの条件が書かれていないため、順位の妥当性は資料からは評価できません。
防御率と与四球率がそろって1.74になった点は、記事の読み方に影響します。
記事中の1.74が与四球率だと気づかず、防御率の話だと受け取る読み手もいるかもしれません。
逆に、公式記録の防御率を見て記事の1.74と同じだと思うこともありえます。
今回は二つの値が偶然そろっていたため、取り違えても数字の上では誤りになりません。
ただ、自責点と四球が1つずれていれば値は分かれます。
分からなかったこと
WHIPが救援部門トップという順位の対象条件は、記事に書かれておらず確認できませんでした。
ストレートの高め投球割合54.2%、高めの空振り率34.4%、リーグ平均との差約13ポイント、カットボールの投球割合4.2%、ボール先行時の打率.053は、いずれもデータスタジアムの集計です。
集計方法(高めの区分の境界など)が公開されていないため、計算し直せませんでした。
リーグ平均の実数も記事にありません。
ストレートの被打率が1割台という記述も、公式記録には球種別の項目がないため確認できませんでした。
平均球速約145キロも同じく照合できていません。
出典
- 日本野球機構(NPB)「2026年度 福岡ソフトバンクホークス 個人投手成績」2026年10月28日更新 https://npb.jp/bis/2026/stats/idp1_h.html
- パ・リーグ.com「鷹のルーキー右腕・鈴木豪太を支える2つの武器」データスタジアム、2026年10月27日 https://pacificleague.com/news/2026/10/87221
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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