2026年10月4日、パリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞(G1・芝2,400メートル)について、JRAの単勝オッズで日本馬メイショウタバルが1番人気になったことが話題になりました。
一方、英国の競馬専門紙が出した予想オッズでは、同じ馬は33-1でした。
2つの数字は同じレースの「勝つ見込み」を表しているように見えますが、数えている対象が違います。
この記事では、JRAのオッズが何を数えた数字なのかを、JRAの公式資料から辿ります。
何が報じられたか
THE ANSWER編集部の記事(2026年10月4日16時18分配信、Yahoo!ニュース掲載)は、JRAが発売する凱旋門賞の単勝オッズを紹介しました。
記事によると、同日午後4時時点でメイショウタバル(牡5歳、武豊騎手)は2.6倍の1番人気、アドマイヤテラ(牡5歳、C.デムーロ騎手)は11.7倍でした。
見出しは「悲願成就なるか」で始まり、オッズへの反応としてSNSの投稿を複数引用しています。
引用された投稿には、日本馬の人気を意外とみる声と、応援で買われるのは想定どおりとみる声の両方が含まれていました。
JRAの発表では、発走は日本時間10月4日23時05分です。
ネット馬券の発売開始は同日7時00分なので、午後4時の数字は締め切りの約7時間前のものです。
JRAの出馬表に関する発表(10月2日)では、アドマイヤテラは12番ゲート、メイショウタバルは13番ゲートでした。
原典に当たる
JRAの「海外競馬の勝馬投票券(馬券)発売のルール」には、発売方式として「JRA独立プール(日本国内のみで発売)」と書かれています。
続けて「独立プール方式のため、日本国内独自のオッズとなります」とあります。
つまりJRAのオッズは、フランスの主催者が売る馬券や、英国のブックメーカーの値付けとは合算されません。
日本国内でJRAの馬券を買った人の賭け金だけで決まります。
同じページには、払戻率は「中央競馬と同じ」と書かれています。
JRAの「馬券のルール」によると、平成26年6月7日以降の単勝の設定払戻率は80.00%です。
単勝オッズは、単勝の売上全体から払戻分を取り、その馬に賭けられた金額で割った値です。
ここから逆算すると、オッズ2.6倍の馬には単勝の売上全体の約31%(0.8÷2.6)が集まっていたことになります。
アドマイヤテラの11.7倍は約7%(0.8÷11.7)です。
JRAのオッズは10銭未満を切り捨てて表示するため、この割合は目安です。
まとめると、JRAの単勝オッズが直接示すのは「日本でJRAの馬券を買った人の賭け金が、どの馬に何割集まったか」です。
勝つ確率の見積もりは、賭けた人の判断を通して間接的に反映されるだけです。
比較する材料として、英国のRacing Postは10月2日の記事で全16頭の予想オッズを出しています。
ダリズ(前年の凱旋門賞優勝馬、JRAの出走馬情報による)が7-4、モルティーズクロスが5-1、カルパナが6-1、メイショウタバルが33-1、アドマイヤテラが40-1でした。
英国式の分数オッズは賭け金を含まないので、10進法に直すと7-4は2.75倍、33-1は34倍、40-1は41倍になります。
この予想オッズに特定のブックメーカー名は付いていません。
報道との差分
同じ馬について、2つの数字を並べます。
| 馬名 |
JRA単勝(10/4 16時・THE ANSWER記載) |
JRA売上の占有率の目安 |
Racing Post予想(10/2) |
10進換算の逆数 |
| メイショウタバル |
2.6倍・1番人気 |
約31% |
33-1 |
約2.9% |
| アドマイヤテラ |
11.7倍 |
約7% |
40-1 |
約2.4% |
| ダリズ |
記事に数値なし |
— |
7-4 |
約36% |
メイショウタバルの場合、英国の予想オッズでは数%の見込みとされた馬に、JRAの売上の3割前後が集まりました。
差はおよそ10倍です。
ただし、右端の列は「勝率」ではありません。
ブックメーカーのオッズには業者の取り分が上乗せされるので、全馬の逆数を足すと100%を超えます。
左の列もJRAの控除後の数字です。
2つの列は算出方法が違うため、同じ物差しで並べられるのは「大きさの桁がどれだけ違うか」までです。
THE ANSWERの記事はJRAの数字だけを示し、反応の引用でその意外さを伝える構成でした。
「独立プール」という発売方式の説明と、海外の数字との比較は含まれていません。
読者が「なぜ」を考える材料はSNSの投稿に任された形です。
なぜそうなったか
資料から言えるのは、JRAのオッズが日本国内の賭け金だけで決まるということです。
賭けた人の大半が日本の競馬ファンなら、日本で実績を知られている馬に賭け金が集まりやすいことは、発売方式からそのまま説明できます。
JRAの出走馬情報によると、メイショウタバルは宝塚記念を2025年と2026年に連覇していて、日本の競馬ファンには馴染みのある馬です。
一方、ダリズの実績はフランスと英国でのもの(2025年の凱旋門賞、2026年のガネー賞など)です。
応援の意味で買われたのか、本気で勝つと見て買われたのかは、オッズからは区別できません。
資料から確認できるのは、どの馬に賭け金がいくら集まったかだけです。
どちらの理由で集まったとしても、2.6倍という数字は同じように作られます。
もう一つ、比べる相手の性質も見ておく必要があります。
Racing Postの数字は締め切り前の「予想オッズ」で、実際に賭け金が集まった結果ではありません。
JRAの16時の数字も、締め切りまでに変わり得る途中経過です。
報じられた2つの数字は、どちらも確定値ではないという点で共通しています。
JRAの「JRA所属馬挑戦の歴史」に載っている成績表では、1969年から2025年までに延べ35頭の日本馬が出走し、2着が4回(1999年、2010年、2012年、2013年)、優勝はありません。
見出しの「悲願」はこの記録を指していると読めます。
分からなかったこと
JRAの凱旋門賞オッズのページは、こちらの取得環境からは表示できませんでした。
そのため午後4時時点の2.6倍と11.7倍はTHE ANSWERの記載に頼っており、JRAのページそのもので数値を確かめてはいません。
ダリズなど海外馬のJRAでのオッズと人気順も確認できていません。
単勝の売上総額は公表時期が分からず、「何人がいくら賭けたか」は出せませんでした。
過去の凱旋門賞でJRAのオッズで日本馬が何番人気だったかも、JRAの資料からは辿れませんでした。
確定オッズと結果はレースの後に改めて確かめる必要があります。
出典
- JRA「海外競馬の勝馬投票券(馬券)発売のルール」 https://www.jra.go.jp/keiba/overseas/rule/ (2026年10月4日閲覧)
- JRA「馬券のルール」勝馬投票法ごとの払戻率 https://www.jra.go.jp/kouza/baken/index.html (2026年10月4日閲覧)
- JRA「出走馬情報:2026年凱旋門賞」 https://www.jra.go.jp/keiba/overseas/race/2026arc/horse.html (発売開始・発走時刻・出走馬紹介、2026年10月4日閲覧)
- JRA「JRA所属馬挑戦の歴史」 https://www.jra.go.jp/keiba/overseas/race/2026arc/history.html (2026年10月4日閲覧)
- JRA「2026凱旋門賞(G1)の出馬表」2026年10月2日 https://www.jra.go.jp/news/202610/100204.html
- Racing Post「2026 Prix de l’Arc de Triomphe at Longchamp: the runners, the odds, the verdict」2026年10月2日 https://www.racingpost.com/news/festivals/prix-de-larc-de-triomphe/2026-prix-de-larc-de-triomphe-at-longchamp-the-runners-the-odds-the-verdict-aXblV0g0rlts/
- THE ANSWER(Yahoo!ニュース配信)2026年10月4日16時18分 https://news.yahoo.co.jp/articles/5959aa51aca4fad0a8bb615e58ba65e8c615efe6
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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