SPAIA競馬は2026年10月4日の京都大賞典(GⅡ・京都芝2400m)を前に、AIの本命をダノンシーマとする予想記事を出しました。
見出しには「『前走重賞2番人気以内』は複勝率60%」とあります。
この60%が何頭を数えた数字なのかを、記事本文とJRAの公式レース記録で確かめました。
何が報じられたか
記事はSPAIA編集部の署名で、AIが選んだ印は◎ダノンシーマ、◯ヘデントール、▲アクアヴァーナル、△サヴォーナ、×ショウナンラプンタの5頭です。
データの根拠として、本文は「過去10年のうち、京都で施行された8回」の成績を挙げています。
見出しの数字は本文の次の段落から取られています。
前走が重賞だった馬の成績は【7-7-6-69】で、3着以内の大半を占めること。
そのうち前走で2番人気以内だった馬は【3-2-1-4】、勝率30.0%、複勝率60.0%であること。
本命のダノンシーマは前走の新潟記念で1番人気・3着で、この条件に当てはまる馬として書かれています。
AIの仕組みは、過去数十年分のレース結果・競走馬・騎手・調教師・コース・タイム・天気・馬場状態などを自動で学習して予想する、と説明されています。
60%というデータはAIの出力ではなく、記事が根拠として添えた過去の集計です。
見出しの2つの要素は別々の出どころから来ています。
原典に当たる
まず「京都で施行された8回」がどの年かを、JRAのレース結果ページで確認しました。
2016年から2025年の10回のうち、2021年(第56回、10月10日、4回阪神2日)と2022年(第57回、10月10日、4回阪神3日)は阪神競馬場で行われています。
京都競馬場の改修工事に伴う代替開催です。
残りの2016〜2020年と2023〜2025年の8回が京都開催で、記事の「8回」と一致します。
なお、記事は「過去10年」がどの年からかを書いていません。
2016〜2025年と読むと数が合う、というところまでが確認できた範囲です。
次に、この8回の出走頭数をJRAの成績表から数えました。
2016年10頭、2017年15頭、2018年11頭、2019年17頭、2020年17頭、2023年14頭、2024年11頭、2025年18頭で、合計113頭です。
2019年と2023年に競走中止が各1頭あり、この2頭も113頭に入れています。
8回で3着以内の枠は24あります(同着がない前提)。
この113頭を母数とすると、記事の数字の位置づけは次のようになります。
前走重賞組は7+7+6+69で89頭です。
残りの24頭(前走がオープン特別・条件戦などの馬)は3着以内に4回入った計算になります(24枠−重賞組20)。
ただし、記事が競走中止の馬を母数に入れているかは書かれていないため、この24頭と4回は記事の数字からの逆算です。
報道との差分
見出しは「複勝率60%」だけを前に出しています。
本文の数字と、そこから計算した比率を並べると次のとおりです。
| 区分 |
着別度数 |
頭数 |
複勝率 |
| 8回の全出走馬 |
3着以内24回 |
113 |
21.2%(計算) |
| 前走重賞組 |
【7-7-6-69】 |
89 |
22.5%(計算) |
| うち前走2番人気以内 |
【3-2-1-4】 |
10 |
60.0%(記事) |
| うち前走3番人気以下 |
【4-5-5-65】(差し引き) |
79 |
17.7%(計算) |
見出しで省かれたのは母数です。
60%は10頭のうち6頭が3着以内に入ったという意味で、8年間で条件に当てはまった馬は年平均1.25頭でした。
もう1頭3着を外していれば50%、もう1頭入っていれば70%になります。
1頭で10ポイント動く数字です。
10頭中6頭という結果から、その条件の馬の「本当の」複勝率がどの範囲にあるかを、二項分布のウィルソン法で95%信頼区間として計算すると、約31%〜83%です。
重賞組全体(89頭中20頭)の区間は約15%〜32%なので、両者は重なりません。
前走で上位人気だった馬が好走しやすい傾向そのものは、この数字からも読み取れます。
一方で、「60%」という一点の値を、次の1頭が3着以内に入る見込みとしてそのまま受け取るのは、母数に対して精度を求めすぎです。
なぜそうなったか
この差は、レース前のデータ記事の作りから説明できます。
1つ目は、1レースは年に1回しかないことです。
同じコース・同じレースに絞るほど条件の当てはまりは良くなりますが、10年で10回、京都に限れば8回しか標本がありません。
代替開催の2年を除いたのは、阪神と京都ではコースが違うので筋の通った処理です。
その代わりに母数はさらに減ります。
2つ目は、条件を重ねると率が上がり、頭数が減ることです。
前走重賞という条件で89頭、2番人気以内を足すと10頭になります。
見出しには最も率の高い組み合わせが選ばれやすく、その組み合わせはたいてい最も頭数が少ない、という関係があります。
本文では着別度数【3-2-1-4】が併記されていて、読者が母数を確かめる材料は記事の中にあります。
見出しの字数の中で落ちたのはこの括弧の部分です。
3つ目は、条件と本命が対応する作りです。
本命のダノンシーマが前走1番人気なので、データの条件はこの馬に当てはまる形で示されています。
資料からは、条件を先に決めてから本命を選んだのか、本命に合う条件を後から探したのかは確認できません。
ただ、条件を後から選べる場合は、小さな母数で高い率が出やすくなります。
これは統計一般の性質で、この記事の意図を指したものではありません。
分からなかったこと
前走2番人気以内だった10頭が、それぞれ何年のどの馬かは、記事に一覧がなく特定できていません。
この10頭が京都大賞典当日に何番人気だったかも分からず、当日のオッズの段階で既に人気を集めていた(つまり馬券上の妙味は小さかった)のかどうかは検証できていません。
記事の公開日時は「8時間前」という相対表記で、正確な日付は確認できませんでした。
ダノンシーマの通算成績など記事中のその他の数字は、今回の確認範囲外です。
JRA公式「今週の注目レース」のデータ分析ページは取得時にアクセスが拒否され、照合できませんでした。
出典
- JRA 2016年 京都大賞典 レース結果(第51回、2016年10月10日、4回京都3日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2016/091.html
- JRA 2017年 京都大賞典 レース結果(第52回、2017年10月9日、4回京都3日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2017/090.html
- JRA 2018年 京都大賞典 レース結果(第53回、2018年10月8日、4回京都3日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2018/091.html
- JRA 2019年 京都大賞典 レース結果(第54回、2019年10月6日、4回京都2日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2019/091.html
- JRA 2020年 京都大賞典 レース結果(第55回、2020年10月11日、4回京都2日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2020/091.html
- JRA 2021年 京都大賞典 レース結果(第56回、2021年10月10日、4回阪神2日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2021/091.html
- JRA 2022年 京都大賞典 レース結果(第57回、2022年10月10日、4回阪神3日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2022/091.html
- JRA 2023年 京都大賞典 レース結果(第58回、2023年10月9日、2回京都3日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2023/091.html
- JRA 2024年 京都大賞典 レース結果(第59回、2024年10月6日、5回京都2日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2024/091.html
- JRA 2025年 京都大賞典 レース結果(第60回、2025年10月5日、3回京都2日) https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/replay/2025/091.html
- SPAIA競馬「【京都大賞典】AIの本命はダノンシーマ 『前走重賞2番人気以内』は複勝率60%」SPAIA編集部(2026年10月4日閲覧) https://spaia-keiba.com/news/detail/36141
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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