2026年9月29日、ウェザーニュースは台風26号(スリゲ)について、伊豆諸島では荒天に警戒が必要で、本州では秋雨前線による雨が続くと伝えました。
この記事には台風の強さを表す数字と、今年の台風の発生ペースについての統計が並んでいます。
本稿では、記事に載った数字を気象庁が公開しているデータと突き合わせ、それぞれの数字がいつの時点で何を数えたものかを整理します。
何が報じられたか
ウェザーニュースの記事(2026年9月29日6時25分公開)は、9月29日3時時点の台風26号の状態として、次の数字を載せています。
位置は日本の南の海上、東北東へ時速15kmで進み、中心気圧975hPa、中心付近の最大風速35m/s、最大瞬間風速50m/s、強さの階級は「強い」です。
進路については、9月30日(水)から10月1日(木)にかけて伊豆諸島に近づき、10月1日頃に関東の南の海上を通る見込みとしています。
本州については、関東で9月29日夜から30日朝にかけて秋雨前線による雨が続くとしています。
記事の後半には統計の話が続きます。
今年の26号の発生は統計史上6番目の早さであること、8月の発生数が10個で1966年8月以来60年ぶりであること、1月から9月まで毎月台風が発生した年は1965年・2015年・2026年の3回だけであることです。
記事の本文には気象庁を出典とする明記は見当たりませんでした。
原典に当たる
台風の現況の一次情報は、気象庁が発表する台風情報です。
気象庁の防災情報サイトは台風ごとの諸元をデータとして公開しており、本稿では9月29日12時45分発表分を取得しました。
台風26号の名前は「スリゲ(Surigae)」と記載されています。
この発表での12時時点の実況は、北緯28.7度・東経134.3度の日本の南、北北東へ時速15km、中心気圧990hPa、中心付近の最大風速30m/s、最大瞬間風速40m/sです。
強さの階級欄は「-」で、階級は付いていません。
気象庁の区分では、最大風速33m/s以上44m/s未満が「強い」にあたります。
30m/sはこの基準に届かないため、階級が付かないことと矛盾しません。
同じ発表の予報は次のとおりです。
9月30日0時に中心気圧992hPa・最大風速25m/s、30日12時に994hPa・23m/s、10月1日9時に伊豆諸島近海で996hPa・20m/s、10月2日9時には日本のはるか東で温帯低気圧に変わる見込みです。
予報では中心気圧が上がり、最大風速は下がり続けます。
発生数の統計の原典は、気象庁の「台風の発生数」データです。
1951年から年別・月別の発生数がCSVで公開されており、本稿で取得した版は2025年までを収録していました。
2026年の月別発生数はこの表に入っていません。
報道との差分
まず現況の数字です。
ウェザーニュースの3時時点と、気象庁12時時点の発表を並べます。
- 中心気圧:ウェザーニュース(3時)975hPa、気象庁(12時)990hPa
- 最大風速:ウェザーニュース(3時)35m/s、気象庁(12時)30m/s
- 最大瞬間風速:ウェザーニュース(3時)50m/s、気象庁(12時)40m/s
- 強さの階級:ウェザーニュース(3時)「強い」、気象庁(12時)階級なし
- 進行方向:ウェザーニュース(3時)東北東、気象庁(12時)北北東
数字は9時間の差で大きく変わっています。
これは報道の誤りを示すものではなく、別の時刻の値を比べた結果です。
気象庁の予報でも衰弱が続く見込みなので、朝の記事を昼以降に読むと、台風を実際より強く受け取ってしまいます。
次に統計の数字です。
気象庁のCSV(1951〜2025年)で確かめられた範囲は次のとおりです。
- 8月の発生数10個は、1960年と1966年の2回あり、過去の最多と同じ数です。
直近の10個は1966年で、「1966年8月以来60年ぶり」という記述と合います。
- 1月から9月まで毎月発生した年は、CSVでは1965年と2015年の2回です。
2026年を加えて3回という記述と合います。
- 9月末までに26個目が発生した年は、月単位の集計で1965年・1966年・1967年・1971年・1994年の5回です。
どの年も26個目は9月の発生で、8月以前の年はありません。
2026年が6番目という順位は、この5年すべてより遅い場合にだけ成り立ちます。
なぜそうなったか
現況の数字が食い違う理由は、台風情報の構造にあります。
気象庁の台風情報は実況の時刻ごとに更新され、そのたびに数字が変わります。
報道記事は公開した時点の最新値を載せ、あとから数字を書き直すことはあまりありません。
朝6時台に公開された記事が3時の値を使っているのは、公開時刻を考えると自然な選択です。
ただ、見出しに時刻は入らないため、読者は数字をその瞬間の状態として受け取りやすくなります。
「強い」という階級の扱いも同じ構造です。
階級は最大風速で機械的に決まるので、風速が33m/sを下回ると表示から外れます。
朝の記事に残った「強い」は、その時点では正しい表示だった可能性があります。
ただし、3時時点の気象庁発表そのものは今回取得できていないため、ウェザーニュースの数字が気象庁と同じ値なのか、同社の独自の解析なのかは確かめられていません。
統計の数字は、事情が異なります。
発生数の表は年月単位でまとめられているため、「8月に10個」や「毎月発生」は月別の表から直接確かめられます。
これに対して「6番目の早さ」は発生日時の比較が必要で、月別の表では順位を出せません。
同じ記事の中でも、原典の粒度によって検証できる数字とできない数字が分かれます。
秋雨前線による関東の雨についての記述は時間帯の予想だけで、雨量の数字は載っていません。
数字がないため、本稿では原典との照合の対象にしていません。
分からなかったこと
9月29日3時時点の気象庁の台風情報は、取得した時点ですでに12時45分の発表に置き換わっていました。
そのため、ウェザーニュースの975hPa・35m/sが気象庁の発表値と一致するかは確認できていません。
2026年の月別発生数は、取得した気象庁のCSVに含まれていませんでした。
今年8月の10個と、1〜9月の毎月発生は、今年分の原典では確かめられていません。
確かめられたのは過去の年との比較の部分だけです。
「6番目の早さ」は、比較対象の5年それぞれで26号が発生した日時を得られなかったため、順位を検証できていません。
台風名「スリゲ」の提案国と意味も、名前の一覧の原典に当たれていません。
出典
- 気象庁 防災情報「台風情報」台風第26号(TC2632)諸元データ、2026年9月29日12時45分発表 https://www.jma.go.jp/bosai/typhoon/data/TC2632/specifications.json
- 気象庁「台風の発生数」年別・月別データ(1951〜2025年) https://www.data.jma.go.jp/yoho/typhoon/statistics/generation/generation.csv
- 気象庁 防災情報「台風情報」 https://www.jma.go.jp/bosai/typhoon/
- ウェザーニュース「台風26号(スリゲ) 伊豆諸島は荒天に警戒 本州は秋雨前線による雨」2026年9月29日6時25分公開 https://weathernews.jp/news/202609/290061/
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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