日本で「スクイーズ」と呼ばれる柔らかい触感玩具について、韓国で有害物質検出の発表がありました。
日本語で配信された記事は「国内玩具安全基準を超過」とまとめています。
一方、発表元の資料には、調査した15製品のうち14製品にはその基準が法的に適用されないと書かれています。
原資料から見出しに至るまでに何が残り、何が落ちたかを整理します。
何が報じられたか
2026年9月23日12時(報道解禁)、韓国消費者院(한국소비자원)は「消費者安全注意報」として、オンラインで販売されている触感玩具15製品の調査結果を公表しました。
資料の配布日は9月22日です。
対象は2種類で、粘土状の中身をワックスで薄く覆った「ワックプボール(왁뿌볼)」が8製品、押したり揉んだりする弾性素材の「マルランイ(말랑이)」が7製品です。
マルランイの製品表には「스퀴시(スクイーズ)」を名乗る製品が複数あり、日本でいうスクイーズに近い種類です。
毎日経済(매일경제)の日本語版は、リードで「国内玩具安全基準を超過する有害物質」が検出されたと伝え、続けて電子レンジで温めた製品の話に進んでいます。
韓国内ではMBC、kjtimes、財経日報(재경일보)などが同じ発表を報じました。
原典に当たる
消費者院の報道資料(本文3ページ・別添6ページ)によると、調査の設計は次のとおりです。
対象の選び方は、韓国国内の主要オンラインプラットフォームでの販売順位・レビュー数・SNSでの評判を考慮して15製品を購入したと書かれています。
無作為抽出ではないため、結果は「売れている製品の中の15製品」についての数字です。
適用した基準については、児童製品安全特別法が13歳以下の子どもが使う玩具に国内安全基準の順守を義務づけています。
ところが15製品中14製品は使用年齢を「14歳以上」と表示しているため、同法の安全基準は適用されません。
消費者院は「実際に子どもが使う可能性が高い」として、玩具の安全基準を準用(韓国語で준용)して試験しました。
残る1製品はKC認証(韓国の安全認証)を受けた8歳以上向けの製品です。
基準超過は15製品中9製品(60.0%)でした。
内訳は次のとおりです。
- ワックプボール8製品すべてから、使用禁止の防腐剤MIT(3.90〜9.87mg/kg)とCMIT(11.29〜31.07mg/kg)を検出。
基準が「使用しないこと」なので、検出がそのまま超過になります
- そのうち1製品は、ホウ素溶出量が1,533mg/kgで基準1,200mg/kgの1.3倍
- マルランイ7製品中1製品で、フタル酸エステル系可塑剤が0.66%。
7種類の合計0.1%以下という基準の6.6倍で、内訳はDINPの0.659%
- 鉛・カドミウムは15製品すべてで不検出。
マルランイの残る6製品はフタル酸系も不検出
電子レンジ試験には安全基準がありません。
今年4月と5月、マルランイを電子レンジで温めてやけどをした事例が消費者危害監視システム(CISS)に受け付けられたため、再現試験として実施されました。
条件は1,000Wで最大3分です。
7製品中4製品が25秒〜2分30秒で破裂しました。
残る3製品は3分後に外見の変化はなかったものの、触れた途端に形が変わりました。
表面温度は全製品で70.0〜171.2℃でした。
資料は、結果が製品の使用状態や室温で変わりうると注記しています。
表示は15製品中11製品で不十分とされています(資料の表記は「73.%」で、計算上は73.3%)。
消費者院は販売13社・輸入4社の計17事業者に改善を勧告し、12事業者から回答がありました。
報道との差分
| 項目 |
原資料 |
見出し・リード |
| 基準の位置づけ |
14製品は法定基準の対象外。 基準を準用した試験 |
毎日経済日本語版「国内玩具安全基準を超過する」。 準用の説明は見出しとリードにない |
| 60%の中身 |
9製品中8製品がワックプボールの防腐剤。 マルランイは7製品中1製品 |
kjtimes「60%가 유해물질 초과」。 製品種類の偏りは見出しから読めない |
| 6.6倍 |
マルランイ1製品の可塑剤 |
MBC「기준치 최대 6.6배」。 「最大」で単独の値であることは残る |
| 電子レンジ |
基準のない再現試験。 25秒で破裂した製品の最高温度は70.3℃、171.2℃の製品は2分30秒で破裂 |
財経日報「전자레인지에선 25초 폭발」。 6.6倍と同じ見出しに並ぶ |
もう一つの差は対象国です。
調査対象は韓国のオンラインプラットフォームで販売された製品で、適用したのも韓国の基準です。
日本語版のリードは「国内」を韓国の意味で使っていますが、日本の検索語「スクイーズ」でたどり着いた読者は、日本の基準と受け取るおそれがあります。
提示された日本語版のリードは、同じ文の中で「マランイ」と「マルランイ」という2通りの表記を使っています。
なぜそうなったか
1つ目は、「超過」という言葉が原資料そのものに書かれていることです。
別添1の結果欄は、9製品で「国内玩具安全基準を超過した」と要約しています。
準用の但し書きは本文2段落目にしかありません。
見出しは要約文を引き継いでおり、報道の段階で言葉が変わったのではなく、原資料の中で但し書きと結論の置き場所が離れている構造です。
2つ目は、倍率を持つ項目が限られていることです。
MITとCMITは基準が「使用しないこと」なので、何倍という数字を計算できません。
倍率が出せるのは許容量が決まっている可塑剤(6.6倍)とホウ素(1.3倍)だけです。
該当製品の数で見ると、8製品すべてから出た防腐剤が最も大きい結果ですが、見出しに載る数字は倍率を持つ1製品の値になりやすくなります。
3つ目は、電子レンジ試験が別々の製品の値を持っていることです。
最短25秒と最高171.2℃は別の製品の結果で、一つの見出しに並べると同じ製品の結果のように読めます。
試験に基準がないことも、見出しの長さでは入りません。
資料からは確認できませんが、日本語版は翻訳記事のため、韓国の読者向けに書かれた「国内」を言い換えないまま配信した可能性があります。
分からなかったこと
毎日経済日本語版の本文は取得できず、比較は提示されたリードの範囲に限っています。
MBCの本文も一部しか確認できていません。
報道資料には製品の購入日や試験期間の記載がありません。
CISSに受け付けられたやけど事例の件数も書かれていません。
同じ製品が日本で流通しているかどうかと、日本の玩具関連の基準に照らした場合の判定は、原資料の範囲外なので検証していません。
出典
- 韓国消費者院「[소비자안전주의보] 말랑이 왁뿌볼 등 일부 촉감 완구 제품에서 유해물질 검출」報道資料、2026年9月23日12時解禁(配布9月22日)、https://www.kca.go.kr/home/sub.do?menukey=4002&mode=view&no=1004565110
- 同 報道資料PDF(別添1〜3を含む)、https://www.kca.go.kr/home/board/download.do?menukey=4002&fno=10056047&bid=00000013&did=1004565110
- 毎日経済 日本語版、https://www.mk.co.kr/jp/society/12160777
- MBC「말랑이·왁뿌볼 등 일부 촉감 완구서 유해물질‥기준치 최대 6.6배」2026年9月23日、https://imnews.imbc.com/news/2026/econo/article/6853741_36932.html
- kjtimes「소비자원 “말랑이·왁뿌볼 60%가 유해물질 초과”」、https://www.kjtimes.com/news/article.html?no=80175
- 財経日報(재경일보)、https://news.jkn.co.kr/post/994602
- CBC뉴스、https://www.cbci.co.kr/news/articleView.html?idxno=609663
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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