2026年10月1日、ふるさと納税の指定基準が変わりました。
青森放送は前日の9月30日、青森市が一部の返礼品の受け付けを止め、「3000万円」の影響が出る見込みだと伝えました。
この記事では、その報道を総務省の告示改正資料と並べて読みます。
報道が伝えた基準の中身と原典の条文にはずれがあります。
報道が触れなかった改正項目もあります。
どちらも資料の側から示します。
何が報じられたか
青森放送(RAB)は2026年9月30日19時57分、Yahoo!ニュースに記事を配信しました。
同じ内容の番組はTVerでも公開されています。
見出しは「青森市は3000万円影響か 10月1日~ふるさと納税基準厳格化 一部返礼品受け付け停止」です。
記事が伝えた事実は次の4点です。
- 10月1日から地場産品基準が厳しくなる。
原材料が他の自治体産の場合は、自治体内で行った製造・加工が付加価値の「5割以上」を占めることを証明する必要がある
- 県内で寄付金額が最も多い青森市は、市内の工場で加工する海産物や菓子類など19品目の受け付けを止める
- 返礼品の調達や送料など、受け入れに使える年間経費の上限が最大50%から最大47.5%に下がる
- 青森市は、停止する品目以外の寄付金額は当面変えず、経費を見ながら随時調整する
「3000万円」は、青森市市民協働推進課長がインタビューで答えた言葉が元になっています。
発言は「加工品でいけば昨年度との比較で言えば3000万円ちょっとくらい」です。
原典に当たる
今回の改正の原典は、総務省自治税務局市町村税課の資料2本です。
1本目は「ふるさと納税の指定基準の改正等について」(令和7年6月17日付)です。
改正の中身は次の5項目で、多くが「R8指定(R8年10月)から適用」とされています。
- 広報目的基準の明確化。
自治体名やロゴを載せた区域外製造品は、直近1年に自治体が広報目的で自ら調達・配布・販売した実績があり、返礼品として出す数量がその実績を超えないことなどが条件になる
- 返礼品の調達費用の妥当性確保
- 付加価値基準の算出方法の明確化。
価格に基づく算出を原則とし、製造者が「価値の過半が区域内で生じた」ことを証明し、自治体が提供開始日までに一覧で公表する
- 募集費用の透明化。
1支払先あたり100万円以上の支払いについて、支払先・支払額・支払目的を公表する(R7年度分をR8年9月に公表)
- 返礼品確認事務の効率化
告示の改正案では、第五条第三号の文言が変わります。
旧文言は「相応の付加価値が生じているもの」でした。
改正後は「当該返礼品等の価値の過半が生じているもの」です。
熟成肉と精米だけは、同じ都道府県内で生産された原材料に限る規定が残ります。
2本目は「ふるさと納税について(指定基準に係る告示改正)」(令和8年3月24日付)です。
ここで経費の枠組みが変わります。
これまでは告示が「募集費用総額5割以下」を定めていました。
改正後は地方税法に「寄附金活用可能額」が新設されます。
寄附額から募集費用を引いた額のことで、その割合を最終的に60%以上とし、使途の公表も求めます。
資料には段階的な適用の予定が次のとおり載っています。
| 指定年 |
寄附金活用可能額の割合 |
募集費用に換算した上限(筆者の計算) |
| R7指定まで |
—(募集費用5割以下) |
50% |
| R8指定(2026年10月〜) |
52.5%以上 |
47.5% |
| R9指定 |
55%以上 |
45% |
| R10指定 |
57.5%以上 |
42.5% |
| R11指定以降 |
60%以上 |
40% |
同じ資料によると、令和6年度の受入額は全国で1兆2,728億円、募集費用の割合は46.4%です。
内訳は返礼品25.2%、送付・広報・決済8.0%、事務費等13.2%です。
高所得者の特例控除額に193万円の上限を設ける改正もこの資料に載っていますが、こちらは令和9年寄附分からの適用です。
報道との差分
報道と原典を並べると、次の差があります。
| 項目 |
青森放送の記事 |
総務省資料 |
| 付加価値の要件 |
「5割以上」 |
「価値の過半」 |
| 経費上限 |
最大50%→最大47.5% |
活用可能額52.5%以上。 R11指定で60%以上まで段階的に上がる |
| 証明の後の手続き |
証明が必要 |
製造者の証明に加え、自治体が提供開始日までに一覧で公表 |
| その他の改正 |
触れていない |
広報目的基準、調達費用の妥当性、100万円以上の支払先公表、指定取消制度の見直し |
| 3000万円 |
見出しの主要な数字 |
該当する記載なし(市の発言が出どころ) |
1つ目の差は小さく見えますが、境界の扱いが逆になります。
「5割以上」なら、付加価値がちょうど50%の品は基準を満たします。
「過半」は50%を超えることを指すので、ちょうど50%の品は満たしません。
2つ目は数字としては正確です。
100%から52.5%を引くと47.5%になります。
ただ、資料は47.5%を4段階ある引き下げの1段目として示しています。
記事は1段目だけを伝えていて、その後の段階には触れていません。
3つ目は見出しの「3000万円」です。
元の発言にあった「加工品でいけば」「昨年度との比較で言えば」「ちょっとくらい」という条件は、見出しでは消え、「影響か」という推測の形に置き換わっています。
なぜそうなったか
ここからは資料の構造から説明できる範囲にとどめます。
付加価値要件を「5割以上」と言い換えた理由は、資料からは分かりません。
考えられる要因は2つあります。
1つは、条文の「過半」を放送で耳で聞いて分かる言葉に直す必要があったことです。
もう1つは、自治体側の説明資料がどう書かれていたかです。
後者は確認できていません。
経費の数字は、原典の枠組みそのものが変わっています。
これまでの「募集費用5割以下」という上限から、「活用可能額6割以上」という下限へ移りました。
記事は旧来の「経費の上限」という見方のまま、47.5%に換算して伝えています。
視聴者が前の数字と比べやすい形です。
その代わり、R9以降も引き下げが続く予定と、基準が法律に格上げされる点は抜け落ちています。
地場産品基準の改正は、2025年6月17日付の資料で方向が示されていました。
報道が「あすから」という形で伝えたのは施行の前日です。
地方局のニュースとしては、制度全体よりも地元の市に何が起きるかを軸にするのが自然な選び方です。
19品目の停止と金額の見込みが前に出て、全国共通の改正項目は落ちました。
全国平均の募集費用割合は令和6年度で46.4%です。
これは1段目の上限47.5%をすでに下回っています。
つまり1段目の引き下げが実際に効くのは、平均より経費率の高い自治体です。
総務省資料の中の数字だけで言えることですが、記事の「返礼品の量が少なくなったり寄付金額の設定が上がる見込み」が全国一律の話なのかどうかは、自治体ごとの経費率によって変わります。
分からなかったこと
3000万円が何の金額なのかは確認できませんでした。
寄附受入額の減少見込みなのか、停止する品目の前年度の寄附額なのかが分かりません。
発言以外の出どころは見つからず、青森市の返礼品ページ(2026年8月3日更新)にも制度改正と受付停止の記載はありませんでした。
停止される19品目の一覧と、各品目の付加価値割合も公開資料では確認できていません。
また、令和7年6月17日付資料の告示「案」が、最終的な告示とまったく同じ文言かどうかは、官報の現物では照合していません。
出典
- 総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税について(指定基準に係る告示改正)」令和8年3月24日 https://www.soumu.go.jp/main_content/001070694.pdf
- 総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税の指定基準の改正等について」令和7年6月17日 https://www.soumu.go.jp/main_content/001022276.pdf
- 総務省 報道資料「ふるさと納税の指定基準の見直し等」 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01zeimu04_02000144.html
- 青森市「青森市ふるさと応援寄附制度 返礼品」2026年8月3日更新 https://www.city.aomori.aomori.jp/shisei/machizukuri/1005954/1005958.html
- 青森放送(Yahoo!ニュース配信)「青森市は3000万円影響か 10月1日~ふるさと納税基準厳格化 一部返礼品受け付け停止」2026年9月30日 https://news.yahoo.co.jp/articles/dbe5c25960dc62f379ce8b44f2ee9a0881eb9fe9
- TVer 同ニュース映像 https://tver.jp/episodes/epjuloxq97
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
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