中国・広東省清遠市で硫黄燻蒸したタケノコが見つかったという報道が、「基準値の約24倍」という数字つきで日本に届きました。
この数字を測ったのは誰か。
「基準値」はどの食品の基準か。
日本の輸入統計とどうつながるのか。
原資料をたどって確かめます。
何が報じられたか
集英社オンラインは2026年10月4日配信の記事(dメニューニュース転載)で、清遠市の違法な硫黄燻蒸タケノコから「基準値の約24倍」の二酸化硫黄が出た件を取り上げました。
あわせて、日本で食べられているタケノコの9割前後が輸入品であることを示し、メンマへの影響を問いかけています。
同じ記事の中で、問題のタケノコが日本に輸入されたことは確認されていないとも書いています。
発端は中国の動画配信者「漁猟斉哥」の告発です。
新浪に転載された封面新聞の記事によると、配信者側は2026年8月13日に加工場のタケノコを採取して検査し、加工場2か所(清城区源潭鎮と英徳市)を突き止めました。
これを受けて、清遠市市場監督管理局は9月18日に通報を出しています。
原典に当たる
行政側の一次資料は、清遠市市場監督管理局の9月18日の通報です。
騰訊新聞が転載した内容では、市場監督管理局は「動画の内容は事実」と認め、違法に加工した原料と製品を封印しました。
公安当局は関係者に措置を取り、問題の麻竹タケノコの流通先を急いで追っているとしています。
ただし、この通報には二酸化硫黄の測定値も「何倍」という表現も出てきません。
数字の出どころは配信者側の検査です。
南方都市報系の動画ページは「自測で4860mg/kg、国家基準の24倍」と伝えています。
同じ系列の記事本文では「5000mg/kg近く」で、第三者の検査機関による報告書は示されていません。
つまり24倍は、行政の確認値ではありません。
配信者が自分で測った値です。
比べている「国家基準」はGB 2760-2024(食品添加物の使用基準、2025年2月8日施行)です。
封面新聞の記事によれば、タケノコの二酸化硫黄の残留上限は加工の形で変わります。
乾燥品は1kgあたり0.2g、漬物は0.1g、缶詰は0.05gです。
生の野菜を硫黄で燻蒸することは、そもそも認められていません。
4860mg/kgを乾燥品の上限200mg/kgで割ると24.3になり、報道の「24倍」と一致します。
日本側の数字は、林野庁「主要な特用林産物の令和7年の需給動向」で確認できます。
2025年のたけのこは、国内生産16,176トンに対して輸入量125,467トン、消費量141,643トンで、輸入の割合は88.6%です。
2021〜2025年は86.0〜88.7%の間で推移しています。
ここで注意したいのは輸入量の数え方です。
輸入量は財務省の貿易統計の値に2.364を掛けて、生のたけのこの重さに換算しています。
水煮などの加工品を、生に戻した重さとして数えている数字です。
報道との差分
原資料と報道を並べると、次の違いが出ます。
| 項目 |
原資料 |
日本の報道 |
| 24倍の測り手 |
配信者の自主検査。 行政の通報には数値なし |
「基準値の約24倍」とだけ書かれ、測り手は見出しから読み取れない |
| 基準値の中身 |
中国の乾燥タケノコの上限200mg/kg。 生のタケノコは燻蒸自体が禁止 |
「基準値」と一語にまとめられている |
| 9割の中身 |
たけのこ全体の輸入割合88.6%(2025年、生換算)。 相手国の内訳は表にない |
9割前後が輸入で、そのほとんどが中国産 |
| 日本との接点 |
通報は流通先を追跡中とするだけで、輸出には触れていない |
輸入は確認されていないとしつつ、見出しはメンマを問う |
基準の選び方で倍率は変わります。
同じ4860mg/kgでも、漬物の上限と比べれば48.6倍、缶詰の上限なら97.2倍です。
生のタケノコには上限そのものがないため、倍率は計算できません。
24倍は、タケノコの区分で一番ゆるい上限と比べた、最も小さい倍率です。
誇張された数字ではありません。
日本の基準は中国とつくりが違います。
消費者庁の添加物部会資料(2025年11月18日)に載っている二酸化硫黄の使用基準の条文には、「ごま、豆類及び野菜に使用してはならない」とあります。
品目の定めがない「その他の食品」は1kgあたり0.030g未満です。
なぜそうなったか
測り手が見出しから消えたのは、資料の構造で説明がつきます。
行政の通報は事実を認めて封印を発表しましたが、数値は出しませんでした。
使える数字が配信者の自主検査しかなかったため、報道はその値を使いました。
「基準値の約24倍」という言い方は、数字の出どころが行政でも配信者でも同じ形で書けます。
見出しの字数が限られる中で、測り手の情報は落ちやすい構造です。
メンマと結びついたのには、植物の上での理由があります。
清遠市の通報が対象にしたのは麻竹タケノコです。
国際緑化推進センターの解説では、メンマは麻竹(学名Dendrocalamus latiflorus)のタケノコをゆでて乾かし、乳酸発酵させたものとされています。
竹の種類が同じなので、メンマという連想は資料から自然に出てきます。
ただし、種類が同じことと、流通がつながっていることは別の話です。
清遠市の製品が日本向けに出荷されたことを示す資料は、今回たどった範囲にはありませんでした。
「9割」は林野庁の数字とほぼ一致します。
ただ、あれは生に換算した、たけのこ全体の割合です。
相手国の内訳ではなく、メンマだけを取り出した数字でもありません。
「日本にとって身近な食材だ」という話を補うには使えます。
しかし、今回の汚染品が日本に入ったかどうかの手がかりにはなりません。
分からなかったこと
たけのこ輸入のうち中国産が何割かは、林野庁の需給表に載っていないため確認できませんでした。
財務省貿易統計の国別データを見る必要があります。
メンマが貿易統計でどの品目番号に入るのか、林野庁の換算対象に含まれるのかも確かめられていません。
日本の基準でメンマが「野菜」と「その他の食品」のどちらに当たるかも、資料からは分かりませんでした。
消費者庁の資料にある条文は改正の審議資料に載っていたもので、改正後の施行状況は確認していません。
GB 2760-2024の本文は、国家食品安全リスク評価センターのサイトに接続できず、直接は読めていません。
上限の値は封面新聞の記事によります。
清遠市当局が独自に測った値は、公表されたものを見つけられませんでした。
出典
- 清遠市市場監督管理局 情況通報(2026年9月18日) 騰訊新聞転載 https://news.qq.com/rain/a/20260918A0701Y00
- 林野庁「主要な特用林産物の令和7年の需給動向」(生産量は農林水産省『令和7年特用林産基礎資料』、輸出入量は財務省『貿易統計』) https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/tokusan/attach/pdf/index-10.pdf
- 林野庁 特用林産物の生産動向 https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/tokusan/index.html
- 消費者庁 食品衛生基準審議会 添加物部会 資料2-3(2025年11月18日)亜硫酸ナトリウム等の規格基準の改正に関する部会報告書(案) https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fssc_cms101_251117_09.pdf
- GB 2760-2024 食品安全国家標準 食品添加剤使用標準(国家食品安全風険評估中心) https://gb2760.cfsa.net.cn/category/limit/88.html
- 封面新聞「博主挙報両家作坊用硫磺熏笋 清遠多部門已介入調査」(2026年9月18日) 新浪転載 https://k.sina.cn/article_1496814565_593793e5020025lso.html
- 南方都市報 N視頻「超標24倍,你買的白浄竹笋可能被硫磺熏了一晩」(2026年9月18日) https://m.mp.oeeee.com/n/video/BAAFRD0000202609181668599
- 南方都市報 N視頻「博主曝光:硫磺熏麻竹笋一晩速成!広東清遠渉事窩点被査封」(2026年9月19日) https://m.mp.oeeee.com/a/BAAFRD0000202609191669089.html
- 国際緑化推進センター(JIFPRO)「タケノコ」 https://jifpro.or.jp/bfpro/sanpin/sanpin-03/1328/
- 集英社オンライン(dメニューニュース転載)(2026年10月4日配信) https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/shueisha/nation/shueisha-258802
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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