2026年10月22日、日本のゲームメディアGame*Sparkの記事(Infoseekに転載)が「元miHoYoのAI研究責任者が設立した企業が1,000万ドル超を調達」と伝えました。
同じ件は、中国語圏では10日前の10月12〜13日に報じられています。
この記事では、中国語の配信文と日本語の見出しを並べ、海を渡るあいだに何が残り、何が落ちたかを確かめます。
何が報じられたか
Game*Sparkの記事(2026年10月22日 20時15分掲載)によると、上海の企業SemiGraphが1,000万米ドル超(記事内の換算で約15億7千万円)を調達しました。
出資者として挙げられているのはIDG CapitalとLenovo Capitalを含む複数社です。
創業者の邢骏(Xing Jun)氏は、miHoYoのデスクトップアプリ『N0va Desktop』に出てくるバーチャルキャラクター「鹿鳴(Lumi)」のAI技術開発に関わった人物と書かれています。
開発中の『代号Live』は、新人アイドル「Ria」のプロデューサーになって、歌やダンス、会話を通じて育てる育成シミュレーションです。
モバイル版とPC版が予定されています。
記事は中国の業界メディア「游戏茶馆」のインタビューを情報元に挙げています。
中国語圏では、科創板日報(テンセントニュース上で10月12日 23時27分)、DoNews(10月13日 11時32分)、人人都是产品经理(woshipm、10月13日)が同じ資金調達を伝えました。
DoNewsはこの記事を「通稿」、つまり会社側が配った配信文に基づくものとしています。
原典に当たる
まず一次情報を探しました。
リード投資家とされる联想创投(Lenovo Capital)の公式サイトのニュース一覧を10月22日に確かめたところ、最新の記事は9月29日付で、この件の発表は載っていませんでした。
SemiGraph自身の公式発表もネット上では見つけられませんでした。
そのため、今回たどれた中でいちばん元に近い資料は、DoNewsが通稿として載せた本文と、科創板日報の記事です。
以下の数字はすべて会社側の発表を報道経由で読んだもので、会社や投資家の一次資料で裏を取れたものではありません。
通稿の中身は次のとおりです。
正式な社名は上海半图科技有限公司(SemiGraph)で、2024年設立、本社は上海市徐汇区にあります。
今回のラウンドは「Pre-A轮」、金額は「超千万美元」です。
投資家は「联想创投领投」、それに「IDG资本等多家国内及海外一线资本跟投」が続く形です。
資金の使い道には、人類行動モデルの研究開発、データ基盤の整備、チームの拡充、AIネイティブな3Dインタラクション場面の製品化が並んでいます。
創業者の経歴は「本科毕业于中科大,2016年获香港大学博士学位」で、科創板日報はこれに南カリフォルニア大学でのポスドクを加えています。
miHoYoでの役職は、両紙とも「米哈游’逆熵’AI研究负责人」です。
共同創業者の段金玖氏については「波粒子科技联创(后被字节收购)」と書かれています。
製品の指標として、通稿は2026年9月のテストで『代号Live』が「次日留存达72%、5日留存57%」、「人均日互动近200条」を記録したと述べています。
科創板日報とwoshipmは、50万時間規模の構造化された行動データを蓄えたとも伝えています。
ただ、どの資料にも、テストの参加人数、募集の方法、テストの形式(クローズドかどうか)は書かれていません。
報道との差分
中国語の通稿と日本語の記事を、項目ごとに並べます。
| 項目 |
中国語の通稿(10/12〜13) |
Game*Spark(10/22) |
| 創業者の肩書 |
米哈游「逆熵」AI研究负责人 |
元miHoYoのAI研究責任者(見出し) |
| 金額 |
超千万美元 |
1,000万米ドル超・約15億7千万円 |
| 投資家 |
联想创投が領投・IDG资本等が跟投 |
IDG CapitalとLenovo Capitalを含む複数社 |
| ラウンド |
Pre-A轮 |
記載を確認できず |
| テスト指標 |
次日72%・5日57%・日200回近く |
見出しには載らない |
| 製品の中身 |
行動モデルとテスト指標が中心 |
アイドルRiaの育成・対応機種が中心 |
選択の差がいちばん大きいのは製品の書き方です。
通稿は技術(人類行動モデル)と継続率の数字を前面に出しています。
Game*Sparkはゲームの遊び方とキャラクターを前面に出しています。
省略の差は肩書に出ています。
通稿は「逆熵」という2字でmiHoYo社内の範囲を限っていますが、日本語の見出しではそれが消え、「miHoYoのAI研究責任者」という会社全体の役職のようにも読める形になりました。
ただしGame*Sparkの本文は、担当をN0va Desktopの鹿鳴(Lumi)と具体的に書いており、範囲の情報は本文には残っています。
強調の差は投資家の順番に出ています。
通稿では联想创投が主導役(領投)で、IDG资本は追随役(跟投)です。
日本語ではIDG Capitalが先に来て、主導と追随の区別がなくなっています。
なぜそうなったか
第一に、配信の経路が違います。
中国語の各紙は会社側の通稿をもとにしています。
Game*Sparkは別の媒体「游戏茶馆」のインタビューを情報元に挙げています。
インタビューでは製品の遊び方が語られやすく、通稿では投資家向けの指標が書かれやすいと考えられます。
製品の書き方の差は、この情報元の違いでおおむね説明できます。
ただし游戏茶馆の記事そのものは今回見つけられなかったため、この点は資料からは確かめられていない推測です。
第二に、読者が違います。
Game*Sparkはゲームの読者に向けた媒体で、その読者にいちばん通じる固有名詞は社名のmiHoYoです。
「逆熵」はmiHoYo社内の名前で、日本の読者にはなじみがありません。
見出しの字数が限られる中で、知られていない語から削られるのは、媒体の制約から自然に起きることです。
「意図的に大きく見せた」と言える材料はありません。
第三に、金額の表記です。
「超千万美元」は下限だけを示していて、上限はわかりません。
Game*Sparkの円換算は下限の1,000万ドルを換算したものとみられます。
換算レートと基準日は、確認できた範囲では示されていません。
第四に、テスト指標が見出しに載らなかった点です。
継続率は母数が示されて初めて比べられる数字です。
日本語の記事が見出しで使わなかったことで、母数のない数字が広まることは結果として防がれています。
分からなかったこと
Game*Sparkが情報元に挙げた游戏茶馆のインタビューは、今回は見つけられませんでした。
そのため、アイドル「Ria」、モバイル版とPC版の予定、「1対1の体験」といった記述は、中国語の原文と照らし合わせられていません。
SemiGraphと联想创投の公式発表も確認できず、調達額は会社側の通稿の数字のままです。
継続率72%と57%は、テストの参加人数と条件が書かれていないため、他のゲームと比べられる数字かどうかを判断できません。
N0va Desktopや鹿鳴の開発体制の中で「逆熵」がどこに位置づけられるかも、miHoYoの一次資料ではたどれませんでした。
出典
- 联想创投 公式サイト ニュース一覧(2026年10月22日に確認・該当の発表なし、最新は9月29日付)https://capital.lenovo.com/news/trend.html
- DoNews「半图科技完成Pre-A轮超千万美元融资 联想创投领投」2026年10月13日(通稿) https://www.donews.com/news/detail/1/6738558.html
- 科創板日報(テンセントニュース)「半图科技完成Pre-A轮超千万美元融资 联想创投领投」2026年10月12日 https://news.qq.com/rain/a/20261012A0CF2000
- 人人都是产品经理(woshipm)半図科技の資金調達記事 2026年10月13日 https://www.woshipm.com/ai/6477100.html
- Game*Spark(Infoseek転載)「元miHoYoのAI研究責任者が設立した企業が1,000万ドル超を調達」2026年10月22日 https://news.infoseek.co.jp/article/gamespark_173953/
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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