衆院比例の議席配分を「ドント式」から「サンラグ式」に替える案が、与野党の選挙制度協議で議論されています。
見出しには「中小政党が議席得やすい」とあります。
本当にそうなるのか。
2026年2月8日投票の第51回衆院選について総務省が公表した確定得票を使い、11ブロックそれぞれで2つの方式の議席を計算し直しました。
何が報じられたか
読売新聞オンラインの2026年10月21日配信の記事によると、与野党は10月20日に衆院選挙制度をめぐる政党間協議の第3回会合を開きました。
次回は自民党の実務者である鈴木馨祐元法相が折衷案を示すことで合意しています。
会合では、チームみらいが提案したサンラグ式の導入案に国民民主党が賛意を示しました。
与党内にも、定数削減とセットであれば導入を認める声があるとされます。
協議は10月末をめどに結論を出す予定です。
東京新聞の2026年8月18日の記事によると、サンラグ式は8月の時点で鈴木座長の試案にすでに入っていました。
原典に当たる
公職選挙法第4条第1項は、衆院の定数を465人とし、そのうち289人を小選挙区、176人を比例代表としています。
この数字は、衆議院の議案データベースにある「衆議院議員の定数削減等に関する法律案」(第219回国会 衆法第11号)の改正文に、現行の定数として書かれています。
比例の176人は、同じ法案が書き換える対象にしている公選法別表第二で11ブロックに分けられています。
内訳は北海道8、東北12、北関東19、南関東23、東京都19、北陸信越10、東海21、近畿28、中国10、四国6、九州20です。
この法案は自民党と日本維新の会が2025年12月5日に提出したものです。
定数を「420人を超えない範囲」に減らし、比例を156人にする内容です。
議案一覧での扱いは「閉会中審査」でした。
東京新聞の説明では、ドント式は各党の得票を1、2、3と自然数で順に割り、商(割り算の答え)の大きい順に議席を配ります。
サンラグ式は1、3、5と奇数で割ります。
大きい政党の2議席目以降の商が小さくなるので、小さい政党の1議席目が先に入りやすくなります。
計算に使ったのは、総務省「第51回衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調」(2026年2月13日)です。
比例の有効得票は合計57,259,957票でした。
各党の比例当選者は自民67、中道改革連合42、国民民主20、維新16、参政15、チームみらい11、共産4、れいわ1で、計176人です。
報道との差分
同じ資料の「比例代表選挙区別党派別得票数」をブロックごとに2つの方式で割りました。
名簿の人数や重複立候補による制約は考えず、割り算の結果だけで配っています。
北海道・東北・北関東では、ドント式で計算した結果が総務省の議席配分表の順位と一致することを確かめています。
| 党派 |
得票率 |
ドント式 |
サンラグ式 |
| 自由民主党 |
36.72% |
81 |
67 |
| 中道改革連合 |
18.23% |
35 |
33 |
| 国民民主党 |
9.73% |
18 |
17 |
| 参政党 |
7.44% |
14 |
16 |
| 日本維新の会 |
8.63% |
13 |
14 |
| チームみらい |
6.66% |
11 |
12 |
| 日本共産党 |
4.40% |
4 |
6 |
| れいわ新選組 |
2.92% |
0 |
6 |
| 日本保守党 |
2.54% |
0 |
4 |
| 減税日本・ゆうこく連合 |
1.42% |
0 |
1 |
ドント式では、自民は得票率36.72%で議席の46.0%(81議席)を取ります。
サンラグ式では38.1%(67議席)まで下がります。
議席を増やすのは、得票率がおおむね8%以下の政党です。
一方、得票率18.23%の中道改革連合は2議席減り、導入に賛成した国民民主党も1議席減ります。
「中小政党が得をする」と言うとき、その「中小」にどこまで含まれるかで答えが変わります。
最後の1議席を取るのに要る商(ボーダー)も下がります。
東京都ブロックでは、ドント式の約28万票がサンラグ式では約17.8万票に、四国ブロック(定数6)では約17.3万票が約13.8万票になります。
なぜそうなったか
見出しの「中小政党が議席得やすい」は、方式の一般的な性質としては計算と合っています。
ただ、2つの点が見出しから抜けています。
1つ目は、得をしない中堅政党があることです。
サンラグ式は大政党から議席を削りますが、その議席は1〜2議席分の票を持つ政党に回ります。
10〜20%台の政党は差し引きでほぼ変わらないか、少し減ります。
2つ目は、実際の結果との関係です。
ドント式で単純に計算すると自民は81議席ですが、実際の当選は67人でした。
配分表を見ると、東京都ブロックでは自民の商が他党より大きいのに順位が5位までしか付いておらず、残りの議席は他党に回っています。
名簿に当選できる候補者が足りなかったためと読み取れます。
つまり今回の選挙の実際の議席は、サンラグ式で計算した自民の議席と同じ水準でした。
方式を変えた場合の影響を、実際の議席と比べて測るか、ドント式の計算値と比べて測るかで、見え方が大きく変わります。
資料からは確認できませんが、定数削減とセットで議論される理由として次のことが考えられます。
定数が減るとボーダーが上がり小さい政党に不利になるので、サンラグ式でそれを打ち消す、という組み合わせです。
分からなかったこと
e-Gov法令検索が保守中だったため、議席配分の規定である公職選挙法第95条の2の原文は取得できませんでした。
そのため、名簿の候補者が足りない時に議席が他党へ移る仕組みは、配分表から読み取った範囲で書いています。
鈴木氏の折衷案の中身と、定数を減らした後の各ブロックの定数は未公表なので、削減後の試算はしていません。
ここに示した数字は、今回の得票がそのまま変わらないと仮定した計算です。
方式が変われば有権者の投票行動も変わる可能性があり、その分は含めていません。
出典
- 総務省自治行政局選挙部「第51回衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調」2026年2月13日 https://www.soumu.go.jp/main_content/001055922.pdf
- 衆議院「衆議院議員の定数削減等に関する法律案」第219回国会 衆法第11号 本文 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21905011.htm
- 衆議院 同法案 議案審議経過情報 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DE08CE.htm
- 読売新聞オンライン「中小政党が議席得やすい衆院比例『サンラグ式』導入案、与党内にも容認論…自民が折衷案提示へ」2026年10月21日 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20261021-GYT1T00011/ (配信先 https://news.yahoo.co.jp/articles/fe4f1e593aa905e01d44d6e631fe32dca231056c)
- 東京新聞「衆院選の比例配分で浮上した『サンラグ式』 現行の『ドント式』とどう違う?」2026年8月18日 https://www.tokyo-np.co.jp/article/509182
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
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