九州場所の新番付が出た2026年10月26日、東スポWEBは横綱豊昇龍について「横綱10場所で5場所休場&優勝なし」という見出しを立てました。
この「5場所」という数は、日本相撲協会の公式記録と照らすと合っています。
ただし、同じ「1場所の休場」の中に、1日だけ休んだ場所と全15日を休んだ場所が混ざっています。
この記事では、見出しの数字を協会の場所別成績に戻し、何が数えられて何が落ちたかを確かめます。
何が報じられたか
東スポWEBは2026年10月26日6時の記事で、九州場所の新番付に合わせて豊昇龍の状況を取り上げました。
要点は次の3つです。
横綱在位10場所で優勝がないこと。
そのうち5場所で休場していること。
秋場所は右ヒザ手術の影響で全休したこと。
そのうえで、今場所を途中休場すれば進退問題になるため、出場するかどうかは慎重に判断する、という見立てを書いています。
進退という言葉は、この記事が最初ではありません。
デイリースポーツは2026年9月12日、秋場所の休場届け出を報じる記事で、師匠の立浪親方の「次ダメならそういう(進退)話も出てしまう」という発言を見出しに取っています。
同じ記事は、7月27日に右膝内側側副靱帯損傷の修復手術を受けたこと、初日からの休場は初めてであることも伝えています。
一方、共同通信配信で熊本日日新聞が2026年9月27日に載せた記事は、10月10日の秋巡業(長野県松本市)から途中参加する予定と、九州場所(11月8日初日)への出場に本人が前向きだという師匠の説明を伝えています。
原典に当たる
一次情報は、日本相撲協会の公式サイトにある力士プロフィールの場所別成績です。
2026年10月26日に取得した時点で、横綱昇進は2025年3月場所と記録されています。
昇進直前の2025年1月場所は西大関で12勝3敗の優勝でした。
横綱としての10場所は次のとおりです(協会表記の勝・敗・休)。
| 場所 |
番付 |
勝 |
敗 |
休 |
| 2025年3月 |
東横綱 |
5 |
5 |
5 |
| 2025年5月 |
東横綱 |
12 |
3 |
0 |
| 2025年7月 |
東横綱 |
1 |
4 |
10 |
| 2025年9月 |
西横綱 |
13 |
2 |
0 |
| 2025年11月 |
西横綱 |
12 |
3 |
0 |
| 2026年1月 |
東横綱 |
10 |
5 |
0 |
| 2026年3月 |
東横綱 |
11 |
4 |
0 |
| 2026年5月 |
東横綱 |
0 |
2 |
13 |
| 2026年7月 |
東横綱 |
7 |
7 |
1 |
| 2026年9月 |
西横綱 |
0 |
0 |
15 |
休が1以上ある場所を数えると、2025年3月、2025年7月、2026年5月、2026年7月、2026年9月の5場所です。
見出しの「10場所で5場所休場」は、この数え方と一致します。
同じページの幕内優勝は2回で、昇進前の優勝が含まれます。
2025年1月の優勝はその1回で、横綱の10場所に優勝の記録はありません。
「優勝なし」も公式記録と合っています。
10場所を合計すると71勝35敗44休で、合計150日です。
1場所15日×10場所の150日と一致するため、表の読み取りに抜けがないことも確認できます。
出場した106番の勝率は約67%(71÷106)です。
なお、協会プロフィールに載っている通算の幕内成績は319勝187敗49休です。
報道との差分
見出しの数字は正しく、差は「何を単位に数えたか」にあります。
「5場所休場」は場所を単位にした数え方です。
休んだ日数で見ると、5場所の中身は1日・5日・10日・13日・15日とばらついています。
最も短い2026年7月は7勝7敗1休で、千秋楽の1日を休んだ形です。
最も長い2026年9月は初日からの全休です。
場所単位では、この2つが同じ「1」として足されます。
日数で見ると、横綱としての150日のうち休みは44日で、約29%です。
「10場所中5場所」を割合にした50%とは、同じ記録から出る数字なのに印象が大きく違います。
どちらが正しいという話ではなく、場所単位は「その場所を皆勤できたか」を、日数単位は「土俵にいなかった時間の長さ」を表しています。
3社の記事を並べると、選んだ情報が分かれています。
東スポWEB(10月26日)は通算の数字、デイリースポーツ(9月12日)は師匠の発言、共同通信配信の熊日(9月27日)は復帰予定を見出しに選んでいます。
進退に触れた一次の発言はデイリーが報じた師匠の言葉で、東スポWEBはそれを数字の側から言い直した形です。
もう一点あります。
熊日は7月場所の休場を「横綱豊昇龍が休場、6敗と不振」という見出しで報じています。
公式記録の同場所は7勝7敗1休で、敗数が1つ多くなっています。
記録の構造から見ると、休場を届けた日の取組が不戦敗として敗数に入ったと考えると整合します(資料からは確認できないため推測です)。
速報の時点の数字と、場所後の確定記録とでは数え方が変わる例です。
なぜそうなったか
場所単位の数え方が見出しに選ばれやすいのは、横綱の評価が場所ごとに区切られる仕組みと合っているからです。
番付は場所ごとに発表されます。
優勝も場所ごとに1人です。
「何場所で何回」という形は、その区切りをそのまま数えるので、1行で伝わります。
日数の割合を出すには勝・敗・休の3列を足し合わせる手間がかかり、見出しの字数にも入りません。
発表の時期も影響していると考えられます。
東スポWEBの記事は新番付の発表日に出ています。
番付は場所単位の資料なので、同じ単位で在位10場所を振り返る形になります。
デイリーの記事は休場届け出の当日で、その日に出た新しい情報が師匠の発言だったため、発言が見出しの中心になっています。
共同通信の記事は巡業の予定を伝える日程記事で、数字ではなく今後の動きを前に出しています。
どの社も事実と違うことは書いておらず、その日に手元にあった新しい材料を前に出した結果、焦点が分かれたと読めます。
「優勝なし」と「休場」が1本の見出しに並ぶのは、横綱という地位が成績で降格しないためです。
大関以下は負け越しが続けば番付が下がり、その変化が記録に残ります。
横綱は番付が下がらないため、成績の不振を表す数字が「休場の回数」と「優勝の回数」に集まりやすくなります。
この2つを組み合わせると、番付表を見ただけでは見えない状況を1行で示せます。
一方で、場所単位の「5」は手術を伴うけがと短い休みを同じ重さで数えます。
7月場所の1日の休みは、その後の7月27日の手術と9月場所の全休につながる経過の一部です。
そのため、経過を追うなら場所の回数より、日数の推移(5日→10日→13日→1日→15日)を見るほうが、体の状態の変化に近い情報になります。
分からなかったこと
デイリースポーツは、昇進後10場所で優勝がない記録について、1958年以降で歴代ワーストの11場所に次ぐ記録と書いています。
この比較のもとになった全横綱の記録は今回たどれていないため、本文では使っていません。
横綱審議委員会が休場の多い横綱に出す決議の種類と基準も、協会や委員会の原文を取得できなかったため扱っていません。
「途中休場なら進退問題」という見立てが、どの規定や慣例にもとづくのかは、今回の資料からは確認できませんでした。
7月場所の敗数の差が不戦敗によるものかどうかも、その日の取組結果まではたどれていません。
九州場所に出場するかどうかは、この記事の時点で決まっていません。
出典
- 日本相撲協会「力士プロフィール 豊昇龍 智勝」場所別成績(2026年11月場所時点の表示、2026年10月26日取得)https://www.sumo.or.jp/ResultRikishiData/profile/3842/
- 日本相撲協会 英語版力士プロフィール Hoshoryu Tomokatsu(2026年1月場所の行を確認、2026年10月26日取得)https://www.sumo.or.jp/EnSumoDataRikishi/profile/3842/
- 東スポWEB「【大相撲】豊昇龍 九州場所で途中休場なら進退問題も…横綱10場所で5場所休場&優勝なし」2026年10月26日 https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/407753
- デイリースポーツ「横綱豊昇龍 3場所連続休場が決定 師匠の立浪親方『次ダメならそういう(進退)話も出てしまう』」2026年9月12日 https://www.daily.co.jp/general/2026/09/12/0020810585.shtml
- 熊本日日新聞(共同通信配信)「豊昇龍、秋巡業途中参加へ 九州場所出場にも前向き」2026年9月27日 https://kumanichi.com/articles/2040124
- 熊本日日新聞(共同通信配信)「横綱豊昇龍が休場、6敗と不振 右脚負傷が完治せず、霧島不戦勝」 https://kumanichi.com/articles/2017638
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
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