日刊スポーツの見出しは「21日に○か△でマジックは10」と伝えました。
勝ちだけでなく引き分けでもマジックが減るのはなぜか。
この数字は何を数えているのか。
日本野球機構(NPB)が公開している順位表、日程、セ・リーグの規定を使って検算しました。
何が報じられたか
日刊スポーツは2026年9月20日付の記事で、阪神タイガースについて「21日に○か△でマジックは10」「●なら2位に転落してマジック消滅」という見出しを出しました(検出元の見出しによる。
記事本文は本稿では取得できていません)。
NPB公式の日程によると、阪神は9月20日に甲子園でDeNAに8-1で勝っています。
21日も甲子園でDeNAと戦う予定で、試合開始は14時です。
2位の巨人は20日に東京ドームでヤクルトに3-2で勝ちました。
21日の日程には巨人の試合が載っていません。
つまり21日の結果で動くのは阪神の成績だけで、見出しの3通り(勝ち・引き分け・負け)はすべて阪神1チームの結果で決まります。
原典に当たる
NPBのセ・リーグ順位表(2026年9月20日現在)の上位2球団は次のとおりです。
- 阪神:131試合 72勝58敗1分 勝率.554
- 巨人:134試合 73勝59敗2分 勝率.553 ゲーム差0.0
勝率の計算方法は表の数字から確かめられます。
阪神は72÷(72+58)=.5538で、表示の.554と一致します。
巨人は73÷(73+59)=.5530で、.553と一致します。
引き分けは分母に入っていません。
巨人は勝ち数が1つ多いのに、勝率では阪神が上回っています。
この点がのちの検算で効いてきます。
同じページのチーム勝敗表によると、阪神の巨人戦は16勝8敗です。
1球団あたり143試合で計算すると、阪神の残りは12試合(巨人戦1試合を含む)、巨人の残りは9試合です。
勝率が並んだときのルールは、NPBが2015年9月8日に発表した「セントラル・リーグ アグリーメント第3条(年度優勝球団)追加規定」にあります。
条文には「勝率第1位でかつ勝利数も同じ球団が2球団となった場合は、①シーズン中の当該球団間の対戦勝率が高い球団を年度優勝球団とする」と書かれています。
一方で、NPBの順位表ページにマジックナンバーの欄はありません。
マジックはNPBが公式に発表している数字ではなく、報道各社が順位表と残り試合数から計算している数字です。
報道との差分
マジックは「2位が残りを全部勝っても、首位がこの数だけ勝てば優勝が決まる」数として扱われています。
巨人が残り9試合を全勝すると82勝59敗2分で、勝率は82÷141=.5816です。
この数字を基準に、21日の3通りの結果を検算しました。
21日に勝った場合、阪神は73勝58敗1分で残り11試合です。
残りを10勝1敗なら83勝59敗1分で、勝率83÷142=.5845が巨人の最大.5816を上回ります。
9勝2敗なら82勝60敗1分で勝率.5775となり、巨人に届きません。
必要な勝ち数は10で、見出しの「10」と一致します。
21日に引き分けた場合、阪神は72勝58敗2分で残り11試合です。
残りを10勝1敗なら82勝59敗2分となり、巨人の最大成績とまったく同じ勝率・勝ち数になります。
ここで上記の規定①が適用されます。
阪神は巨人戦ですでに16勝しており、残り1試合を落としても16勝9敗です。
対戦勝率で阪神が上回るため、優勝は阪神に決まります。
引き分けでも「10」になるのはこのためです。
21日に負けた場合、阪神は72勝59敗1分で勝率.5496となり、巨人の.553を下回って2位になります。
ただし残り11試合を全勝すれば83勝59敗1分で勝率.5845となり、巨人の最大.5816を上回ります。
つまり検算上は、負けても自力優勝の可能性は残ります。
この場合に見出しが「マジック消滅」としているのは、計算上の優勝条件ではなく、マジックを首位球団にだけ表示するという扱いによるものと読めます。
なぜそうなったか
引き分けでマジックが減る理由は、資料の構造から2つに分けて説明できます。
1つ目は勝率の計算方法です。
引き分けは分母に入らないため、試合を1つ消化しても勝率は下がりません。
一方で残り試合は1つ減ります。
今回は、引き分け後に10勝すると巨人の最大成績と勝率・勝ち数がちょうど並ぶ数字になっていました。
2つ目は同率時の規定です。
並んだ場合は直接対決の勝率で決まり、阪神はすでに巨人戦の勝ち越しを確定させています。
この有利さがなければ、引き分けの場合の必要勝ち数は10にならなかったはずです。
見出しの「○か△」という短い表記には、勝率の計算方法と2015年の追加規定の両方が折り込まれています。
「●なら消滅」については、NPBがマジックを定義していないことが背景にあります。
計算上の優勝条件と、報道での表示の扱いが別物になっていると考えられます。
ただし、首位球団にだけ表示するという扱いを定めた文書は、資料からは確認できていません。
分からなかったこと
日刊スポーツの記事本文は取得できませんでした。
見出し以外に、同紙がどの計算方法や表示の決まりを使ったかは確認できていません。
「●なら消滅」が首位に限って表示する慣行によるものかどうかも、同紙の説明を読めていないため推測にとどまります。
1球団143試合という前提は、順位表の試合数と対戦成績の合計から逆算した値です。
NPBの日程に関する規定そのものは本稿では取得していません。
21日の試合結果は、本稿の執筆時点ではまだ出ていません。
出典
- NPB公式「2026年度 セントラル・リーグ チーム勝敗表」(2026年9月20日現在)https://npb.jp/bis/2026/stats/std_c.html
- NPB公式「2026年9月 試合日程・結果」https://npb.jp/games/2026/schedule_09_detail.html
- NPB「セントラル・リーグ アグリーメント第3条(年度優勝球団)追加規定の件」2015年9月8日 https://npb.jp/npb/20150908release.html
- 日刊スポーツ「【阪神】21日に○か△でマジックは10 ●なら2位に転落してマジック消滅」2026年9月20日 https://www.nikkansports.com/baseball/news/202609200001937.html
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
最新かつ正確な情報は、一次情報や公式発表をご確認ください。
コメント