文化庁の令和7年度「国語に関する世論調査」で、「なるはやで」を使うことがあると答えた人は全体の33.4%でした。
年齢別に見ると、16〜19歳は74.1%、20〜29歳は76.4%なのに対し、70歳以上は7.2%です。
全体の数字と年齢別の数字が大きく食い違う理由と、報道の見出しで何が前に出て何が落ちたかを、原資料の集計表から確かめます。
何が報じられたか
時事ドットコムは2026年10月2日、この調査を「「日常で手書き」7割」という見出しで報じました。
見出しに入ったのは、手書きの機会と、「噴飯もの」「流れに棹さす」の意味の受け取り方の2点です。
記事本文には、有効回答3,777人、手書きする機会が「ある」69.6%、「噴飯もの」を「腹立たしくて仕方ないこと」と答えた人55.1%、「流れに棹さす」を傾向に逆らう意味と答えた人68.9%、国語に「関心がある」83.1%が書かれています。
今回検索で注目された「なるはやで」は、時事ドットコムの記事本文には出てきません。
原資料では問18と問19の2問でこの言葉を扱っています。
原典に当たる
原資料は文化庁が公開している「令和7年度「国語に関する世論調査」の結果について」(PDF)と集計表(Excel)です。
調査の概要は次のとおりです。
- 調査主体: 文化庁国語課(委託先: 一般社団法人中央調査社)
- 調査時期: 2026年1月13日〜3月3日
- 対象: 全国16歳以上の日本国籍を有する者 6,000人
- 有効回答: 3,777人(回収率63.0%)
- 方法: 郵送法(2020年度から。
2019年度以前は面接聴取法)
「なるはやで」は、設問で「可能な限り急いで」という意味の言い方として示されています。
同じ問いで「えいやで決める」「交通整理する」「正直ベースで言う」「ツーカーの仲」もあわせて聞いています。
資料には、これら5語は「特定の年齢層や特定の業界で広く用いられていると見られる言葉」として選んだと書かれています。
問18(自分が使うか)の全体の結果は、「使うことがある」33.4%、「使うことはない」64.9%、無回答1.7%でした。
5語のうち「使うことがある」が最も多いのは「ツーカーの」47.8%で、「なるはやで」は2番目です。
問19(他の人が使うのが気になるか)は、「気になる」44.7%、「気にならない」54.3%でした。
「気になる」の割合は「えいやで」48.2%、「正直ベースで」46.7%に次いで3番目です。
報道との差分
集計表の年齢別の数字を並べると、全体の33.4%は、どの年齢層の実態ともかけ離れた数字だと分かります。
| 年齢 |
回答者数 |
使うことがある |
他人が使うと気になる |
| 16〜19歳 |
112 |
74.1% |
8.0% |
| 20〜29歳 |
301 |
76.4% |
7.6% |
| 30〜39歳 |
416 |
58.9% |
22.4% |
| 40〜49歳 |
596 |
47.7% |
31.5% |
| 50〜59歳 |
675 |
35.1% |
38.5% |
| 60〜69歳 |
619 |
17.3% |
57.5% |
| 70歳以上 |
1,058 |
7.2% |
71.7% |
使う割合と気になる割合は、30代と40代のあいだあたりから入れ替わります。
20代以下では使う人が7割台で気になる人は1割未満、70歳以上ではその逆です。
地域差もあります。
「使うことがある」は関東41.4%、東京都区部49.1%に対し、北陸20.6%、中国21.3%でした。
報道との差は2点あります。
1つ目は、時事ドットコムの記事がこの設問を扱っていないことです。
2つ目は、「噴飯もの」の受け取り方の扱いです。
記事は「意味変化」を見出しに入れています。
原資料の参考値では、「腹立たしくて仕方ないこと」を選んだ人は2012年度49.0%、今回55.1%です。
ただし2012年度は「分からない」という選択肢があって27.4%が選んでおり、今回の選択肢には「分からない」がありません。
本来の意味とされる「おかしくてたまらないこと」も19.7%から34.1%に増えています。
調査方法も面接から郵送に変わっていて、資料自身が「比較には注意が必要」と書いています。
なぜそうなったか
全体の33.4%が低く見える理由は、回答者の年齢構成から説明できます。
3,777人のうち70歳以上が1,058人(約28%)で、16〜29歳は413人(約11%)です。
使う割合が最も低い層が回答者の3割近くを占めるため、全体の数字は高齢層の側に引き寄せられます。
資料の本文からは、年齢構成を人口比に合わせる補正をしているかどうかは確認できませんでした。
「なるはやで」が見出しにならなかった理由は、資料の構造から説明できる範囲があります。
文化庁の資料は、問18の要約見出しに「「ツーカーの」は「使うことがある」が4割台後半」を選んでいます。
全体で最も多い語を見出しにする書き方で、全体で2番目の「なるはやで」は要約の段階で前に出ていません。
年齢による差が最も大きいのは「なるはやで」ですが、それは年齢別の本文と集計表まで読まないと出てきません。
報道各社がどの段階の資料をもとに書いたかは、資料からは確認できません。
一方で検索では、手書きや慣用句ではなく「なるはやで」が注目されました。
年齢によって評価がほぼ逆になる言葉で、職場で使う人と言われる人の両方が当事者になりうる題材です。
ただし、検索が増えた経路(どの報道やSNS投稿がきっかけか)は今回確認していません。
分からなかったこと
1つ目は文化庁の公表日です。
結果ページに日付の記載が見当たらず、時事ドットコムの記事日付(2026年10月2日)までしか確定できていません。
2つ目は、時事ドットコムが書いた手書きの「前回2014年度比3.1ポイント減」です。
原資料では2014年度の値がグラフでしか示されておらず、数値を文字として取り出せなかったため、照合できていません。
3つ目は集計に年齢補正がかかっているかどうかです。
4つ目は、「なるはやで」を見出しに取った報道が他にあるかと、検索が増えたきっかけです。
これらは確認できていません。
出典
- 文化庁「令和7年度「国語に関する世論調査」の結果について」(PDF) https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/94441001_01.pdf
- 文化庁 同調査 集計表(Excel) https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/excel/94441001_01.xlsx
- 文化庁「国語に関する世論調査」一覧ページ https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/index.html
- 時事ドットコム「「日常で手書き」7割 「噴飯」「流れにさお」意味変化―国語世論調査・文化庁」2026年10月2日 https://www.jiji.com/jc/article?k=2026100200700&g=soc
※本記事は報道・公開情報をもとに作成した速報であり、内容が後に更新・訂正される場合があります。
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